地域とともに沖縄の新しい観光モデルをー日本トランスオーシャン航空 代表取締役社長 青木紀将氏
アフターコロナはエシカルな観光ニーズに注目
1人1人の人生が豊かになるワークスタイルで持続可能な地域発展に寄与
日本航空(JL)グループの沖縄の翼として、沖縄と本土とを結ぶ日本トランスオーシャン航空(JTA/NU)。創業以来地域に根差した経営を続け、ユネスコ世界自然遺産への登録推進にも尽力してきた。「アフターコロナもリアルな旅の魅力は色褪せることはない」と語る代表取締役社長の青木紀将氏に、コロナ禍中の取り組みや今後の展望を聞いた。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)
青木紀将氏(以下敬称略) 那覇空港と離島を結ぶ航空会社として、1967年に南西航空が誕生しました。1993年に名称を日本トランスオーシャン航空に変更し、現在は県内3路線、県外11路線の14路線に就航しています。社員は約800名。「沖縄の発展=JTAの発展」を念頭に事業を運営、JLグループのグローバルスタンダードな品質に沖縄らしさをちりばめたサービスで沖縄ファンの拡大、地域貢献に努めています。
青木 生まれは東京で、早稲田大学大学院卒業後、1989年にJLに入社しました。経営企画室、香港支店などを経て、経営管理部長、旅客システム推進部長、路線統括本部副本部長を務め、2019年4月よりJL執行役員、同年6月よりJTA代表取締役社長に就任。JLグループの沖縄地区(社員数約2300名)統括の役割も担っています。
青木 JTAの2019年度の事業規模は、1日あたりの旅客数1万人、売上1億円・便数70便が目安になります。2000年度は、新型コロナウィルス感染者数の増減や緊急事態宣言等に敏感に反応、4月から5月にかけては旅客数が3桁台の日が続き、前年比約10%をボトムに推移しました。6月、7月は国や県のキャンペーンもあり前年比約55%まで急回復しましたが、8月に入ると感染者数が拡大し前年比約25%に逆戻り。国のキャンペーンが全国展開された10月から12月は前年の6割を超え、特に11月は前年比約75%まで回復しました。ところが年明け以降はまた感染者が増え、2月は前年比約20%まで下落。翌3月は前年もコロナの影響が始まっていたことから前年比約70%になりました。
このように旅客需要は乱高下し、年度計では前年比41%という結果でした。JLグループ全体の国内線旅客数は前年対比で30%台なので、約10%上回って推移していたのが特徴です。宮古や石垣などの離島が密にならない旅先として人気が出たものと思われます。供給量も需要に応じて調整し、ボトムは需要と同様に5月で前年比31%、トップは12月で前年比92%、年度計では前年比65%でした。
2021年度に入ると状況は一転し、感染再拡大や緊急事態宣言延長等に伴い需要は低迷しています。特にこの上期は沖縄が長らく緊急事態宣言等の措置下にあったこともあり、4月から9月の旅客数の累計は19年度比で3割程度となっています。JLグループ全体の国内線も同水準で推移しました。供給量の19年度対比は昨年と変わらず、4月から9月の累計で65%です。
昨年は良い時期と悪い時期の繰り返しでしたが、今年は悪い時期がいつまで続くのかという状況が続きました。社員のモチベーションが下がらないよう、定期的に社長と全社員を繋ぐオンライン会議を開催し、経営状況とメッセージを発信してきました。
青木 10月から12月に入っていた修学旅行など大型団体の予約キャンセル数が、新規予約を大きく上回り、減少基調に推移していましたが、10月に入って一段落したため、今後は伸びていくと思います。
青木 来年1月の繁忙期には100%まで戻す時期を作りたいと思っています。需要に関しては、10月は19年比40%、11月50%、12月60%と上げていくと、第3四半期で50%になります。第4四半期に需要を70%から75%まで戻すことができれば、一時的に供給を100%まで戻すことも可能と考えています。
青木 マイレージ会員でステータスの高い方のご利用状況はあまり低下していない印象です。全体の搭乗率が半分になっても、ラウンジが変わらず混雑しているという状況が発生しています。
また、コロナ禍によってこれまで以上に「安全・安心」が求められるようになりました。JLグループではPCR検査サポートや抗菌抗ウィルス対応等、さまざまな取り組みを行っています。現在はワクチン2回接種済み、または陰性証明をお持ちの方を対象とした那覇‐本土各地チャーターがご好評をいただいています。
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