アフターコロナはリアル旅行会社の人間力を強みに—日本ツアーサービス代表取締役 馬場謙志氏

  • 2021年10月13日

コロナ禍で団体大幅減も営業継続
オリパラ受け入れ業務は大きな財産に

-今後の企業出張需要についてはどのように見ていますか。

馬場 OTAの台頭によって航空券のみの手配はコロナ前から確実に減っていたので、これはコロナ後でも変わらないだろうと思います。OTAでは買えないものを販売していくことを続けていくしかないでしょう。内容をしっかり把握した血の通った商品を販売していければ、コロナ前以上に伸ばすことは可能かもしれません。

 オンラインイベントの普及で、海外の展示会に実際に参加する人数が減るかもしれませんが、リアルイベントはゼロにはならないと思います。実際に現地に行って、現地の担当者と話をしないと、商売にならないことも多いでしょう。その需要をいかにキャッチしていくのかは、営業力にかかっていると思います。

 市場は縮小していますが、供給側も縮小しているので、コロナ前を超えることは不可能ではないと思います。来年にはそのチャンスが出てくるのではないでしょうか。

-旅行会社がコロナ後にも必要とされるため、必要なことは何でしょうか。

馬場 このコロナ禍で旅行会社の存在意義を本当に考えさせられました。つくづく平和産業であり有事の際には最初に切り捨てられる辛さがあり、旅行離れや人との接触を減らすためのオンライン化も加速しています。

 それでもやっぱり旅行会社に頼り、足を運んでくれる方もいる。社員個々が「旅行のプロであること」を自覚して、知識はもちろん、求められているその先を理解してのトータルプロデュースができるようになれば、自然と客が客を呼ぶと思います。

 結局、人は人に付きますし、ファンをたくさん作れば作るほど、仕事は入ってくる。また、「このジャンルなら私にお任せ!」ぐらいの経験と知識を付ける。小さなことでも、「ここの添乗ならば誰にも劣らない案内ができる」「このトピックに関しては私のアレンジの右に出るものいない」など、極端に言えば、マニアになることが大切になってくると思います。一分野でもいいので、秀でたところを伸ばして、それを個人の売りにする。自分で旅行の予約なんて簡単にできる昨今、旅行社はコンサルタント業だという思いを強くしています。

 今後、コロナ前に完全に戻ることはないでしょう。待っているだけでなく、外に仕事を取りに行かなければいけない。弊社としては、営業の人間力で仕事を取ってくることを重視しています。会社というよりも「誰々から買う」ところに特化していきたいと考えています。そのなかで、よりお客様の期待を超えたサービス・感動を提供できるスタッフを育てること、これが会社の使命と課題だと思っています。

-最後に、観光産業へのメッセージをお願いいたします。

馬場 まず政府に対して、感染対策と経済活動を同時に進めていくウィズコロナに舵を切ったと思うので、今後もそこはブレずに続けてほしいと思います。

 私は大手への反骨心で商売してきたので、思いが強すぎるのかもしれませんが、中小業者でも、得意分野を極めていけば、大手に負けない仕事ができると信じています。お互いに、とにかく諦めずに、前向きに仕事に取り組んでいきましょう。

-ありがとうございました。