豪州の「今」を駐在員の視点から-共生かゼロか、足並みの揃わぬコロナ出口戦略
世界で依然猛威を振るう新型コロナウイルス、そして次々と現れるデルタ株、ラムダ株などの変異株。オーストラリアでは市中感染者がゼロと、ほぼ完全に新型コロナウイルスが抑えこまれていましたが、ここにきてデルタ株による感染が拡大し、シドニーやメルボルンなどの大都市ではロックダウンが実施されています。
オーストラリア全土で急ピッチで進められるワクチン接種、そのワクチン接種の進展により見え始めたオーストラリア開国など、オーストラリアの現状をレポートします。
オーストラリアの感染拡大状況
現感染者数 | 市中感染者 (過去7日間) | 帰国感染者 (過去7日間) | |
---|---|---|---|
オーストラリア全体 | 19,171 | 10,091 | 38 |
ニューサウスウェールズ州 | 14,201 | 9,103 | 19 |
ビクトリア州 | 4,679 | 892 | 1 |
オーストラリア首都特別区 | 245 | 85 | 0 |
クイーンズランド州 | 32 | 10 | 8 |
南オーストラリア州 | 8 | 1 | 6 |
西オーストラリア州 | 5 | 0 | 3 |
ノーザンテリトリー準州 | 1 | 0 | 1 |
タスマニア州 | 0 | 0 | 0 |
オーストラリアの新型コロナウイルス累計感染者数は8万2202人、死亡者数は1138人となっています。日本の累計感染者数が167万人に達しようとしていることを考えれば、人口比率で見てもいかにその数字が少ないか分かります。デルタ株の出現以前は、オーストラリアの新規感染者数は隣国のニュージーランドと同様に、ほぼゼロに抑え込まれていました。
しかし、今年6月に国内に持ち込まれたデルタ株の影響は甚大で、9月18日現在、オーストラリアは未曽有の感染拡大に見舞われており、特にシドニーのあるニューサウスウェールズ州では、6月26日より施行されたロックダウンは13週間に及び、現在も継続中です。このロックダウン措置にも関わらず州内の感染者数はさらに増えると見込まれ、同州のベレジクリアン州首相は、集中治療室の必要ベッド数が10月中旬にピークを迎えると述べています。オーストラリア第2の都市であるビクトリア州のメルボルンでも、ロックダウンと規制緩和を繰り返しており、8月8日より施行されている現在のロックダウンは間もなく7週目に入ります。
両都市ともロックダウンに反対する大規模なデモが行われ、多数の逮捕者も出ており、次第に長期化する厳しい行動規制に対する不満、ストレスが高まってきています。
オーストラリアのワクチン接種状況
少なくとも1回接種した人の割合 | 接種完了した人の割合 | 接種回数(1日当たり) | |
---|---|---|---|
アラブ首長国連邦 | 92.4% | 91.3% | 8万回 |
イギリス | 72.6% | 66.2% | 10万回 |
アメリカ | 64.2% | 54.9% | 77万回 |
日本 | 65.5% | 53.2% | 121万回 |
オーストラリア | 57.6% | 36.0% | 27万回 |
オーストラリアでは、市中感染の発生がほぼゼロに抑えられて危機感が薄かった所に、当初オーストラリアではメインのワクチンにする予定だったアストラゼネカ製ワクチンの一時的な接種停止と信用低下が加わり、ワクチン接種は遅々として進みませんでした。しかしながら、ここにきてデルタ株の国内感染拡大に伴って、人々の危機感の高まり、ゼロ戦略継続への疑念、世界的なワクチン接種の推進とワクチンパスポート利用の流れ、ファイザー製のワクチン国内供給の大幅な増加等から、急速にワクチン接種スピードが上がりつつあります。
中でもデルタ株の感染拡大に見舞われているニューサウスウェールズ州のワクチン接種率は上がっており、9月11日現在、16歳以上の人口の77%以上もの人が1回目のワクチン接種を終え、そのうち44.5%はすでに接種完了したとされています。
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