【ホテル総支配人リレーインタビュー】第8回 ロイヤルパークホテル常務取締役総支配人 笹井高志氏

  • 2021年9月16日

小学生時代から志した人間相手の仕事
総支配人は文化祭の実行委員長

-ここではどんなホテル作りを心掛けてきましたか。

笹井 なぜ繰り返しご利用してくださるかお客様に尋ねると「ここへ来ると館内どこでも自分を分かってくれる。そんな場所は自宅以外にない。だから安心できる」といった答えを返してくれるリピーターが多くいました。この方たちを大切にするのは当然である一方、お客様の年齢が上がれば利用頻度が落ちるので新たな客層獲得が必須だと考えました。そこで力を入れたのがスイーツです。就任早々にパンケーキで勝負をかけ見事に失敗しましたが、パティシエたちの意気が上がり、その後は進化系かき氷や月替わりのアフタヌーンティーがヒットするようになりました。今ではアフタヌーンティーが1日平均40件、月平均で1000件も売れています。今年も老舗ほうじ茶専門店「森乃園」とのコラボレーションで「ほうじ茶アフタヌーンティー」を企画し過去最高の販売数を記録しました。スイーツ人気で女性の評判が高まると自然とレストランの利用も増えました。

 テレビ番組で紹介されたモンブランは放送後1万個を販売。このほか日本橋の老舗「榮太樓總本鋪」とのコラボスイーツや、カルピスやミツカンのお酢を使ったコラボドリンクなど様々な取り組みを行っています。

 天の川をモチーフにしたメインロビーの「天の川シャンデリア」の下では、毎年七夕前後に特別なディスプレイでお客様を出迎え、天の川プライスとして1人7700円のディナープランや7泊8日で7万7000円の宿泊プラン等の特別フェアも開催しています。今回も、当ホテルを舞台とした小説が映画化され、ロビーでの衣装展示やタイアップキャンペーンポスター制作、コラボスイーツとドリンクも販売開始となります。

-楽しそうな企画ばかりですね。

笹井 総支配人の仕事は、学校の文化祭の実行委員長と同じだと考えています。ホテルは基本的に人々が楽しみに来る場所。ならば文化祭と同様に、どうすれば人が楽しむために集い、どう呼びかければ自分の店に来てくれるか、それを単純に突き詰めればいい。人々が楽しめるアイデアを皆で出し合い実現に向けて動く。総支配人は実行委員長として、それらをまとめればいいわけです。

-今回のコロナ禍の影響はいかがですか。

笹井 観光産業への打撃はリーマンショックの18倍とも言われ、これまでの危機とは規模が違います。ロイヤルパークホテルも稼働率はもちろん、コロナ禍前は50%を占めた外国人宿泊客比率、そして平均客室単価も大幅に落ち込みました。

-コロナ禍におけるコストセーブはどのように取り組んでいますか。

笹井 東日本大震災の経験が生きたのは雇用調整助成金への対応でした。早くから対応できるように準備を指示しました。また経費削減予算を部門別に立て毎月目標達成するよう徹底しました。そのほか、これまで外注していたスチュワードや客室清掃、社員食堂などを内製化しました。

-コロナ禍中の収益確保のためどのような施策を打ちましたか。

笹井 長期滞在プランが好評です。長期滞在の特典として荷物部屋を無料サービスしているので、数字上は平均客室単価を下げる要因になっていますが、コストがかからないので問題ありません。驚いたのは家の改装やリフォームのためホテルに長期滞在するお客様が想像以上に多いことです。親会社である不動産業の三菱地所グループと販売強化しています。そのほかにも様々な目的で長期滞在の利用ニーズがあることも分かりました。

 食事のテイクアウトの強化やデリバリーにも昨年から取り組んでいます。今年4月から本格コース料理のテイクアウトメニュー(和・洋・中コース選択)を発売。タクシーデリバリーやドライブスルーのサービスも始めました。

 宴会関連では昨年12月から、都内ホテルで初めて宴会場のライブ映像を客室の専用TVチャンネルで配信するサービスを開始しました。大人数が集まれずに開催が難しい講演会やセミナー、結婚披露宴などでも利用ニーズがあると期待しています。

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