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気兼ねなく良質なサービスを、ライフスタイルホテルの可能性に挑む-アロフト大阪堂島 総支配人 ユージン・パク氏

  • 2021年9月13日

関西初の「アロフト」ブランド、LGBTQフレンドリーホテル第1号にも認証
大阪の魅力の発信基地を目指す

 今年6月に開業したアロフト大阪堂島。ユージン・パク総支配人は、コロナ禍をサバイバルし未来を切り拓くために大阪全体で地域の価値を維持する必要性を強調する。アロフト大阪堂島としても大阪文化の紹介に力を入れ、LGBTQ市場にも積極的に向き合うなど、単一ホテルの立場を超えて大阪の魅力の発信に力を入れる同氏に話を聞いた。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)

パク氏

-はじめに自己紹介をお願いいたします。

ユージン・パク氏(以下敬称略) 出身は韓国ですが、家族でオーストラリアに渡り、そこで育ちました。ホテルの仕事に関してはマリオットグループを中心に各国でキャリアを重ね、オーストラリア、シンガポール、中国などで経験を積みました。

-続けてアロフト大阪堂島についてもご紹介ください。

パク マリオット・インターナショナルのライフスタイルホテル・ブランドである「アロフト」の関西進出第1号として6月28日に開業しました。アロフトは、今年3月に御堂筋に開業したW大阪が冠している「W」の姉妹ブランドです。同じライフスタイルホテルですが、ラグジュアリーカテゴリーに属するWに対して、より気軽に利用してもらえるホテルがアロフトです。

 ライフスタイルホテルは日本ではまだ目新しいコンセプトですが、従来とは異なる音楽体験やデザイン体験、デジタル技術を駆使したサービス等を重視する次世代、いわゆるX、Y、Z世代を顧客ターゲットに据えているのが特徴です。ただし我々が言う「次世代」とはあくまでも「次世代の感性を持った人々」の意味で、年齢そのものを指しているのではないことは強調しておきます。

 アロフト大阪堂島が体現するのは目新しさだけではありません。デザインコンセプトは堂島の「記憶」と「未来」です。堂島は江戸時代に日本有数の米の取引市場がある商業地区でした。オールデイダイニングの「ザ・ウェアハウス」は、堂島の歴史を象徴する米蔵にまつわる道具などを展示し、蔵をイメージした木組みを天井に配しています。

 またロビーの壁面にはスケートボードが飾られていますが、デザイナーに依頼してスケートボードの絵柄には昔の堂島の様子や古地図をカラフルに描いてもらい、記憶と未来の両方を表現しました。

-最近では日本でもライフスタイルホテルのアプローチをする施設が増えてきました。これは市場の世代交代を反映しているのでしょうか。

パク 先ほど説明したように、年齢に関係なく新しい感性を持った人々が増えているのだと思います。例えば「音楽好き」と言うときの「音楽」には、ポップスもジャズもクラシックもあり、年齢層に関係なく音楽を好む人々が存在します。デザインについても同じです。

 日本を含め社会のあり方が構造的に変化し生活スタイルの考え方も変わりました。ホテル利用やホテルに対する考え方もそうです。かつて日本のラグジュアリーホテルでは宿泊客1人にホテルスタッフが3人がかりでパーソナルサービスを提供し高く評価されてきました。しかし生活スタイルが変わればホテルの対応にも変化が求められます。高級ホテルのバーにショートパンツで入れば居心地が悪いですが、ショートパンツでも気兼ねなく入れて良質なサービスが受けられることを求める人々がいる。若い年代だけでなく、50代、60代の紳士淑女も同じです。ホテルにいると意識せずリラックスできるのはライフスタイルホテルの魅力の1つです。

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