気兼ねなく良質なサービスを、ライフスタイルホテルの可能性に挑む-アロフト大阪堂島 総支配人 ユージン・パク氏
関西初の「アロフト」ブランド、LGBTQフレンドリーホテル第1号にも認証
大阪の魅力の発信基地を目指す
パク 「記憶」と「未来」の他にホテルとして掲げるテーマがあります。それが「大阪」。大阪には歴史に培われた独自の文化とテイストがあります。味に厳しい大阪の人々に鍛えられた大阪の食は本当に美味しいですし、値段も安いのが魅力です。ぜひこの魅力を海外を含め広く発信していきたいです。最終的には「東京や京都、北海道に行くから大阪に寄る」のではなく、「大阪に行くついでに京都や東京へ行く」というような旅行者を増やしたいですね。
新たな音楽クリエーターの発掘と育成にも力を貸していきます。「ライブ・アット・アロフトホテル」では大阪の新進気鋭アーティスト等にライブパフォーマンスを披露する場を提供し、大阪の音楽専門カレッジの学生たちにも出演機会を提供しています。
またポストコロナという意味では、ホテルの料金設定には今から注意を払わなくてはなりません。ビジネスとして収益を上げるため競争力は重要ですが、目先だけの考えで安売りに陥らないよう細心の注意が必要です。料金を下げるのは簡単ですが、上げるのには5倍の時間が必要です。1つのホテルの値下げがホテル業界に波及し、結果的にホテル業界全体の収益が低下し、大阪経済にも悪い影響を与えます。東京でもコロナ禍前には1泊4万円から5万円だったラグジュアリーホテルの客室料金が2万2000円程度まで下落しました。大阪では1泊9000円台のラグジュリーホテルもあります。我々のホテルの戦略はシンプル。”Keep the positioning, and be competitive”です。
パク ホテルのプレオープン以来、主な旅行代理店やOTAのマーケティングマネージャーと緊密に連絡を取っています。日本では伝統的な旅行代理店はインバウンドのグループに対して地の利を活かした強力な存在であり、OTAは旅行者に利便性と情報を提供しています。市場の動向に注意深く耳を傾け、プラットフォームで付加価値ある商品を提供する日本の旅行会社との協業を重視しています。
パク 日本の観光産業の新参者である私がメッセージというのはおこがましいので、個人的な意見として受け取っていただきたいのですが、観光産業にとって極めて厳しい環境の下だからこそ短期的ではないビジネス視点が求められていると思います。短期的なロスを中長期的に取り戻す発想が必要なのではないでしょうか。値下げに走り短期的にひと息つけたとしても、生き残っていくのは難しい。大阪全体が思いを1つにして全体の底上げを図ることが重要で、それが長期的に各ホテルの収益を引き上げ、人材や設備投資に回す資金を確保することにつながり、未来の成長の原動力になるのだと考えます。