高知県、ニューノーマル観光で選ばれる旅行先に —高知県観光コンベンション協会専務理事兼事務局長 岡林秀典氏
感染対策の徹底で安心の旅行環境を提供
『竜とそばかすの姫』の舞台としてPR
足摺岬や四万十川などの大自然、坂本龍馬や中岡慎太郎など幕末の志士に代表される歴史、皿鉢料理や鰹のたたきなどの郷土料理、今では全国に広がったよさこい文化。高知県の観光資源は多彩だ。現在はコロナ禍で入込客数は減少しているものの、今年7月に公開された『竜とそばかすの姫』の舞台になるなど、観光の潜在力はさらに高まっている。高知県の観光産業の現状と今後について、高知県観光コンベンション協会専務理事兼事務局長の岡林秀典氏に聞いた。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)
岡林秀典氏(以下敬称略) 主な事業としては、国内外の観光客やコンベンションの誘致、観光事業を推進するためのプロモーション、高知フィルム・コミッションに関する事業、スポーツ観光の推進、地域観光の推進などがあります。
プロモーション事業では、一般向けにホームページやSNSでの情報発信やパンフレット制作などのほか、旅行会社への売り込みなどBtoBの取り組みも大きな事業の柱になっています。インバウンドについては、国際誘致部があります。県にも国際観光課がありますが、大きく分けて、県がBtoCのプロモーションを行い、コンベンション協会はBtoBの事業が中心になります。
スポーツ観光の推進については、アマチュアスポーツ合宿、スポーツイベント、プロスポーツのキャンプなどの誘致を行います。主に冬の閑散期の集客が狙いです。
高知フィルム・コミッション関連では、主にロケ地支援を行っています。今年7月に公開された細田守監督作品の『竜とそばかすの姫』では、高知県が舞台に選ばれましたが、コロナ禍で現地視察が難しいなか、希望のロケ地の写真を送るなどのサポートを行いました。映画公開に合わせて、7月にはJR山手線で「竜とそばかすの姫の舞台、高知へ」とラッピングした電車を走らせました。また、8月にはJR大阪環状線の車両やとさでん交通の路面電車でも同様のプロモーションを実施しています。
岡林 1983年に高知県庁に入庁しました。観光への関わりでは、2008年に観光振興課で、大河ドラマ『龍馬伝』を担当。翌年には「土佐・龍馬であい博」も担当しました。その後、2012年に観光政策課副参事として高知県観光コンベンション協会に派遣。2014年には観光政策課長になり、2019年から現職に就いています。
岡林 『龍馬伝』が放映される前は年間300万人ほどで推移していましたが、『龍馬伝』が放映された年は年間400万人を超えました。その後、その数字は定着し、2019年は438万人まで増加しましたが、昨年はコロナの影響で266万人まで落ち込みました。
高知県は他県と比べて感染者が少なく、田舎で密にならないというイメージがあることから、入込客数の減少は小さかったかもしれません。それでも、客室稼働率は低く、特に高知県は旅館タイプのホテルが多いため、定員稼働率にすると、もっと低い数字になっていると思われます。
高知県の特徴として、来県者のほとんどが車の利用で、四国はもちろん、大阪や兵庫など関西圏からの観光客が多くなっています。
コロナ禍以前のインバウンドについては、ほぼ皆無に近い状況でした。訪日誘致に取り組んできましたが、当初はほとんど成果が表れず、2019年頃から外国人宿泊者も徐々に増えていましたが、その矢先にコロナに襲われてしまいました。一般の訪日需要以外では、韓国のプロ野球チームがキャンプを行うことから、それに帯同する報道陣などの需要は高知県のインバウンド市場にとって大きいものになっています。
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