【会計士の視点】コロナ禍の決算書を読み解く-JTB編
財務三表から見るJTBの姿とは
2021年3月期の1年で20年分近い利益を失っている
新型コロナウイルスにより甚大なダメージ受けた観光産業。観光目的の国際往来は1年以上ストップし、国内旅行は緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などの発令により多くの観光地では閑古鳥が鳴いている状態だ。
観光産業で使う指標として送客数、宿泊数、観光収入などがあるが、今回より始まる【会計士の視点】シリーズでは財務会計からコロナ禍の観光産業の影響を見ていく。財務諸表を読み解くのは、公認会計士で企業へのコンサルティングもおこなっている玉置繁之氏。第1回目は旅行業界の雄JTBの財務諸表を読み解いていく。
JTBの決算書を公認会計士はどう読むか?
JTBの2021年3月期の決算情報が5月28日に発表されました。今回はそのJTBの決算書を、公認会計士である筆者がどういう順番で見て、どういう感想を持つのかというのを書いてみたいと思います。
なお、JTBの決算概要は、JTBのホームページから見ることができるので、興味がある方は是非原典をご覧いただければと思います。
今回の分析は連結ベースの数値で見ていきたいと思います。また、当記事はあくまで筆者の私見であり、筆者の所属する団体や、掲載媒体であるトラベルビジョンの見解ではないので、その点はご了承頂ければと思います。
JTBの2021年3月期の損益計算書を分析
今回はコロナ禍で大打撃を受けている旅行業のJTBなので、実際にどのくらい打撃を受けているかを見るため、まず初めに損益計算書を見ていきましょう。
連結損益計算書
(JTB決算情報より抜粋)
(単位:百万円)
(単位:百万円)
前連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | |
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売上高 | 1,288,569 | 372,112 |
売上原価 | 1,009,697 | 263,995 |
売上総利益 | 278,872 | 108,117 |
販売費及び一般管理費 | 277,479 | 205,673 |
営業利益(△損失) | 1,393 | △ 97,556 |
営業外収益合計 | 3,080 | 25,970 |
営業外費用合計 | 1,925 | 2,690 |
経常利益(△損失) | 2,548 | △ 74,276 |
特別利益合計 | 8,921 | 196 |
特別損失合計 | 5,828 | 30,888 |
税金等調整前当期純利益(△損失) | 5,641 | △ 104,968 |
法人税等合計 | 3,430 | 1,910 |
当期純利益(△損失) | 2,211 | △ 106,878 |
非支配株主に帰属する当期純利益(△損失) | 562 | △ 1,719 |
親会社に帰属する当期純利益(△損失) | 1,649 | △ 105,159 |
損益計算書を見ると、今期は△1051億5900万円の親会社に帰属する当期純損失、一過性の特別利益・特別損失考慮前の経常損失でも△742億7600万円と、かなり大きな損失を出しております。