HISの予測は楽観的? ワクチン特需はある? ー 20代社員が振り返る今週のニュース

 先々週のJTB決算に引き続き、HISの決算説明会に関するニュースが今週の大きなトピックです。

 まず、澤田氏の「今がボトム」という部分、これは誰もが納得のいく部分かとおもいます。ワクチン接種が高齢者以外にも始まろうとしており、すでにコストカットは十二分に進んでいる(はず)の今、海外旅行の大きな戻りは難しくとも国内旅行は一定数戻ってくるはずというのは説得力のある話というより、ほとんどの観光産業関係者の想定でしょう。

 HISのコスト削減を見ると、拠点を約35%減、人員を約23%減し、販管費を32%もカットしており、JTBのコストカットが約27%だったことを考えてもすごい数値です。旅行以外の事業も、今回はコロナの影響で全セグメント赤字という結果でしたが、それでも観光産業一本の企業より圧倒的にリスクヘッジがなされているでしょうし、秀そばも百店舗目標とかなり力を入れられています。(本当に余談ですが、秀そば一度は行っておかねばと思いながらコロナのせいで行けずじまいです)

 ここまで書くとHIS完璧!という風に見えますが、懸念点もあります。それは需要の戻りに関する予測ですね。HISが発表した予測は私には些か楽観的にも思えます。特に「沖縄100万人計画」なんかはできればすごいですが、ちょうど執筆している今日(6月17日)午前に沖縄の緊急事態宣言延長がニュースになりました。ピークシーズンに差し掛かるタイミングでの緊急事態宣言の延長、離島など医療体制が万全とは言えない観光地の存在、沖縄という観光需要に経済が大きく依存している地域がこの一年間観光資源に受けたダメージなどを考えると、なかなか難しそうです。

 これはHISに限らず観光需要の戻り予測をお聞きするとよく思うことですが、皆様そもそもコロナによって受けた全世界の経済的なダメージを想定に入れておられてその予測なのだろうかと考えます。旅行というのはやはり不要不急のもので、経済的に余裕がないときにいの一番に削られやすい出費です。コロナの影響でこんなにも経済的にダメージを受け、とてもじゃないけど旅行なんて……という層もかなり増えたのではないかと私は思っています。行きたい方がいて、行ってほしい旅行会社があって、来てほしい観光地があるから旅行需要は戻りますというのであれば話は早いですが、2021年の倒産や解散などの予測数は合わせると6万を超えるらしく、それ以上に雇用も失われることと経済状況の悪化もあることを考えると、実はそんなに爆発的に国内旅行って増えないのでは? と悪い予測をしてしまいます。まあこれは経済の素人が感覚で思った悲観的な予測ですし、意味なく悲観的な予測をしても意味はありませんが。

 さて、執筆時点で掲載から一日経たずでHIS決算の記事を追いつきそうな、三浦弁護士寄稿の「ワクチン接種者限定ツアー」に関する見解の記事、これは最高に面白い記事です!個人的には今年のトラベルビジョンの記事で一番面白い!

 実際にワクチン接種者限定のツアーを催行することに問題があるのかどうか、三浦弁護士の見解は実際の記事を読んでいただくとして、このタイミングで旅行会社やホテルであれば当然、ワクチン接種者にターゲットを絞った施策というのは思いつくところでしょう。ワクチン接種者だけのツアーがもしできるなら、バスなどでコストをかけてコロナ対策をする必要はないのか?宴会場はどうなるのか?さらに言えば海外旅行は?色々と考えるところも多いはずです。そして、もしかしたら対応によってはかなりの利益を生むのではという発想にもなるでしょう。実際にHISの記事でも、ワクチン接種の影響で海外支店はすでにツアーを受注していると記載があり、これと同じ現象が日本でおこっても不思議はありません。

 ついにワクチン接種回数が多い日で1日あたり50万回まで来ました。65歳以上の方に限れば、6月16日時点で2回目のワクチン接種率はすでに9.27%まできており、人数にして320万人を超えています。これだけの人数をターゲットにできる高齢者向けツアーは、すでに商品として充分な価値がありそうです。(接種率などは政府CIOポータルで公開されています。都道府県別など接種率もわかりますよ)

 7月中旬を目処にワクチンパスポートが導入予定と政府の発表もありました。そうなると本格的にワクチン接種者ツアーを考える段階に来るでしょう。ワクチンによる旅行特需はあるのか、それを掴むのはどこになるのか。需要を掴むために必死で考える時がきましたね。