【弁護士に聞く】ワクチン接種を参加条件にしたツアー募集は許されるか

自由とは元来「制約付き」

 ワクチン接種者限定ツアーは平等原理の禁止する差別には当たらないと言っても、ワクチン未接種者からすれば、それでは事実上ワクチン接種を強制されることになると、接種の自由の侵害との不満が出よう。しかし、この不満は自由の本質の無理解によるものであると言うしかない。

 自由な社会とは、より多くの選択肢のある社会であり、その中での人々の人生は選択の積み重ねに他ならない。自由な社会では、誰もが多くの選択肢の中から、自分にとってのメリットとデメリットを比較考量しながら、一つの選択肢を選択するという作業を繰り返している。人によっては、過去を振り返れば、異なる選択肢を選択していればもっと明るい人生であったと後悔するだろう。むしろ、後悔する人の方が多いことは文学や映画の題材になっている。

 つまり、全ての選択肢は共同社会に住む以上は、どれも何かしらかのデメリット(制約)がつきものである。それでも、そのデメリットを甘受する意思さえあれば、選択の自由が保障されているのが、自由社会である。ワクチン接種の副反応が怖ければ、集団免疫が成立するまでの暫しの間、ワクチン接種者限定ツアーに参加することを我慢しさえすれば、国は勿論誰からも接種を強制されることはなく、接種による副反応を避けるというメリットを享受できるのである。これこそ、「自由の自然な享有形態」と呼ばれるものである。

三浦雅生 弁護士
75年司法試験合格。76年明治大学法学部卒業。78年東京弁護士会に弁護士登録。91年に社団法人日本旅行業協会(JATA)「90年代の旅行業法制を考える会」、92年に運輸省「旅行業務適正化対策研究会」、93年に運輸省「旅行業問題研究会」、02年に国土交通省「旅行業法等検討懇談会」の各委員を歴任。15年2月観光庁「OTAガイドライン策定検討委員会」委員、同年11月国土交通省・厚生労働省「「民泊サービス」のあり方に関する検討会」委員、16年1月国土交通省「軽井沢バス事故対策検討委員会」委員、同年10月観光庁「新たな時代の旅行業法制に関する検討会」委員、17年6月新宿区民泊問題対策検討会議副議長、世田谷区民泊検討委員会委員長に各就任。