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【京都ホテルミニインタビュー】第5弾「『本物』を目指し前を向き続ける」HOTEL THE MITSUI KYOTO 総支配人 楠井学氏

 京都ホテルミニインタビュー最終回にご登場いただくのは、コロナ禍中の昨年11月にオープンしたHOTEL THE MITSUI KYOTOの総支配人、楠井学氏。三井総領家の邸宅跡地に建つ格式高いホテルの静かなる情熱に迫る。

第1弾 エースホテル京都 上席総支配人 飯田雄介氏
第2弾 ホテルグレイスリー京都三条 支配人大出健史氏
第3弾 ホテル カンラ 京都 運営統括責任者 友岡大輔氏
第4弾 ベッセルホテルカンパーナ京都五条 支配人 佐藤大和氏

HOTEL THE MITSUI KYOTO 総支配人 楠井学氏
-コロナ禍中の開業には大変なご苦労があったと思います。

楠井学氏(以下敬称略) 影響は甚大だったと言わざるを得ません。工事現場の安全を守るため、工期スケジュールも調整し、それに伴い開業タイミングも遅れました。ですが総支配人として特に辛かったのは、新入社員たちとコミュニケーションを取るメインの手段がオンラインになってしまったことです。チーム毎に分かれて会場を借りての研修もしていたものの基本は在宅で、現場に入ってきたのは9月頃からでしたので、5ヶ月に渡って今まで経験したことのない従業員とのコミュニケーションをしたことになります。

-GWはいかがでしたでしょうか。

楠井 4月の時点では忙しくなるのではないかと考えていましたが、稼働が落ちたことは否めません。ほかの地域やホテルでは間際や当日予約が多かったとの話も聞きますが、当ホテルでは間際のブッキングが多かったという印象はありませんでした。京都は当時感染者数が多かった大阪の影響が大きかったのではないかとも推測しています。

 GW期間中にいらしたお客様については、やはり部屋に滞在される時間が長かった印象があります。ホテルに温泉もあるのでそちらをご利用される方も多かったですし、お食事もホテル内で取られる方が多かったですね。

-需要減退に対応されるため、どのようなコストセーブに取り組まれましたか。

楠井 残業のコントロールなど取り組むべきことは行っていますが、このタイミングで重要視しているのは従業員のトレーニングです。1人1人をマルチプレーヤーとして戦力化することが中長期でのコストセーブに繋がると考えており、以前から取り組みたいという想いは持ち続けていたのですが、コロナ禍が大きなきっかけとなりました。マルチプレーヤーと言っても縦割りではなく、キッチン担当がスパの業務も行うなど、部署を超えたものです。ホテリエというと担当業務へのプロフェッショナリズムからマルチタスク化を敬遠しそうなイメージがあるかもしれませんが、今までお客様と接することがなかった従業員がその機会を得て喜んでくれたりと、順調に業務の幅を広げてくれています。これはポストコロナにおける「攻め」の施策にも繋がると感じています。

-地域や環境に対する取り組みについてお聞かせください。

楠井 バスアメニティはリサイクル可能なアルミニウムパッケージとなっており、開業時ホテル業界では日本初の試みでした。また、こちらはほかの施設でも同様かと思いますが、客室に残ったティッシュペーパーなどの紙製品は従業員エリアで再利用しています。

 地域に向けては、アフタヌーンティーの器に京都の工藝品を取り入れるなど、伝統工藝とのコラボレーションに取り組んでいます。まずは地場の方に認められ、好きになっていただくことを意識しています。

 ラウンジ脇にはお茶を点てるスペースを設けていますが、単なる「それっぽいもの」にはならないように、武者小路千家の先生に監修していただいています。開業の1年前から支配人と一部のスタッフはお茶のお稽古を継続しており、着物を着用するスタッフも作法の先生から定期的に指導していただく機会を設けています。伝統文化を尊重しながら、しっかりと地域に溶け込んでいきたいと考えています。

-トラベルビジョンの読者である観光産業の方々へメッセージをお願いいたします。

楠井 このような環境の中、下を向こうと思えばいくらでも俯くことはできますが、私は自分のチームに向けて、今できることをしっかりと積み上げ、需要が戻ったときに自信を持ってやっていけるような会社、そして自分自身を目指していこうと伝え続けています。前を向いていきましょう。

-ありがとうございました。