【現地レポート:イギリス】今年も夏休みはステイケーション? コロナ規制撤廃への道のり
ワクチン接種は40代以下まで拡大
海外旅行は一部解禁も旅行業界の状況は依然厳しく
旅行業界全体の印象
国内旅行はイースター直後から一部可能になり、5月17日からは遂にホテルやB&Bなど宿泊施設も営業を再開します。しかし解禁が望まれていた海外旅行に関しては、政府の判断は予想よりかなり厳しいものとなりました。確かにイギリス国内の市中感染率は激減したものの、ワクチン接種をしても100%感染を防げるわけではないこと、また世界各国の状況、変異種の脅威など日々変化する状況下、政府としては入国に関して慎重にならざるを得ません。
前回のレポートでも触れました、旅行業に特化した補助も、各業種別の団体や世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)などが継続して政府に働きかけてはいますが、残念ながら変化は見られず。また、一時帰休と雇用補償金も9月末まで延長はしたものの、イギリスの旅行業は以前にも増して苦しい状況です。
海外からの送客でしか成り立たないインバウンドはもちろん、アウトバウンドにしても海外の渡航先は限定され、レジャー、ビジネス、MICE問わず、オンラインで出来る業務は限られ、収益もこれまでには到底及びません。
訪日に関しても、オリンピックで海外観客受け入れを中止した打撃は甚大です。19年はラグビーワールドカップの影響もあり、初めてイギリスからの訪日が40万人の大台を超え、日本からの渡英39万人を上回る記録的な大成功だっただけに、関係者の落胆は計り知れません。ただ日本ブームはまだ続いており、すでに22年春の団体ツアーが完売になっている会社もあります。日本側の受入れ態勢さえ整えば、必ずイギリスからの旅行者は戻るでしょう。
イギリスでも近年大人気のクルーズは、英系、外資問わず各社6月下旬から8月にかけて英国内のクルーズを再開します。3泊4日から1週間の短期が主流ですが、中には14日間のコースも含めすでに完売しているものもあるようです。ほとんどはワクチン接種が参加条件ですが、PCR検査のみの会社もあります。しかし船内の安全を保つため、乗客はこれまでの半分かそれ以下で催行となると、航空会社やホテル同様、収益率はかなり厳しいのではないでしょうか。
待望の海外旅行解禁、しかしまだ渡航先は12か国・地域に限定
イギリスでは現在、世界各国と地域をそれぞれのワクチン接種率、感染率、変異種とその識別能力で評価し、コロナ感染リスクを信号カラーで色分けしています。
最もリスクの高い「赤」は主に南米、アフリカ、中東、インドとその周辺国、これに12日からはトルコ、モルディブ、ネパールが加わり43か国が対象で、これらの地域からは原則入国禁止。但し、イギリス国籍者や居住者が帰国する場合、指定ホテルで10日間の検疫とその間2回のPCR検査が義務付けられ、1人あたり1,750ポンド(約27万円)の高額な費用も自己負担です。
日本を含む世界中ほとんどの地域は「黄色」に区分けされ、5月17日以降イングランドへ入国後、赤の地域同様2回のPCR検査と10日間の検疫は必要ですが、自宅、または滞在先での自主隔離が可能で、期間も5日間に短縮可能です。このことから、旅行業界の事前予想では、黄色でも検疫をすれば海外旅行は可能という解釈でしたが、残念ながら今回は黄色の地域への渡航は特別な理由がない限り、観光目的では不可となり、海外旅行は緑の地域のみとなったのは周知のとおりです。
緑の場合、イングランドに入国時から2日以内にPCR検査が1度必要なだけで自主隔離は不要。しかしリストの中身は、数か所を除けば実際に行くことは困難、または入国制限中のところがほとんどです。
<緑の国と地域>アイスランド、イスラエル、オーストラリア、シンガポール、ニュージーランド、ブルネイ、ポルトガルの7か国、サウスジョージア・サウスサンドイッチ諸島、ジブラルタル、セントヘレナ、アセンションおよびトリスタン・ダ・クーニャ島、フォークランド諸島と4か所の英領、およびファロー諸島(デンマーク領)
但し、この色別リストは今後3週間毎に見直しされるため、6月から7月にかけて順次緑のエリアが増えることが期待されています。旅行業界にとってこの夏の収入は重要な生命線であり、顧客側もこの夏どこか海外で過ごすことが、現在唯一の楽しみと言っても過言ではありません。
しかし、もう1つの懸念は旅行に必要な陰性証明の費用です。緑の地域でもイギリス出発前、帰国時と最低2回のPCR検査が必要で、この平均費用は1人150ポンド(約23,000円)とEU平均より高額です。その上、訪問先でも検査や隔離が必要な場合、その費用も加わるため富裕層はともかく、一般旅行者にとっては、今年の海外旅行はかなり割高になることは間違いありません。