【現地レポート:イギリス】今年も夏休みはステイケーション? コロナ規制撤廃への道のり
ワクチン接種は40代以下まで拡大
海外旅行は一部解禁も旅行業界の状況は依然厳しく
春の訪れと共に厳しいロックダウンの規制も徐々に緩和され、まだ肌寒い日もある中、レストランやパブの屋外席は笑顔で語り合う人々に溢れ、ようやく少し活気が戻ってきたロンドン。2回の今回は、英政府最新の発表内容をベースに、コロナの現状と今後の見通し、旅行業界の様子、特に注目の海外渡航再開への動きを中心にレポートいたします。(前回のレポートはこちら)
※内容は2021年5月11日現在
3度のロックダウンとワクチン接種の効果
現在、新規感染者数は全国の週平均で1日あたり2,000人前後と、まだゼロには程遠いものの、今年1月ピーク時の約60,000人から激減、死亡者数も当時の週平均1,200人以上から現在は10人以下とほぼゼロに近づき、入院患者数も同じくピーク時の週平均約4,000人から約100人前後まで減少し、確実にロックダウンとワクチンの効果が表れてきました。
デジタル化が進んでいる国民医療サービスと共に、多くのボランティアに支えられているイギリスのワクチン接種。すでに全成人の7割にあたる約3,600万人が1回目を、うち約1,800万人は2回目も終了し、現在は40代以下への接種も急ピッチで進んでいます。ファイザー、アストラゼネカに続き現在はモデルナのワクチンも供給開始となり、当初の目標より2ヶ月早い7月末までには18才以上の全成人が1回目のワクチン接種を終了する見込みです。
なお、接種までの流れは、住民が各自登録している地元の総合医から電話で招待、または携帯にテキストでオンライン予約のリンクが送付される場合があり、それぞれ希望日時を予約。会場は病院、薬局や特設会場など1か所に集中しないよう工夫され、概ね自宅から1~3km以内の場所で受けられます。携帯やネットがない場合も、手紙やヘルパー経由の招待などの配慮もありました。
ワクチンに加え無料の感染テストも普及しています。テストは2種類あり、明らかな感染の症状がある人にはPCR検査を、また自覚症状はなくても、念のため確認したい場合は簡易テストが受けられます。このおかげで人々の感染への不安はだいぶ和らぎ、ロードマップと呼ばれる規制解除に向けた計画も順調に進んでいます。
普段は批判されることも多い政府ですが、コロナに関しては迅速なワクチン開発と接種、定期的な情報開示、そして収入の補償など、政府の明確な指針とコミットが肌で感じられます。これらのコストはもちろん将来の増税や、何らかの予算削減となることも必至ですが、それは皆当然と受け止めているのではないかと思います。
6月21日以降、規制撤廃までのロードマップ
イングランドにおいては3月8日以来、ステップ1~4と呼ばれる4段階のステージを5週間ごとに設定。次の段階に進む前に必ずワクチン接種率、重症および死亡率の推移、感染率の推移、変異種の脅威レベルのコントロールという4つの指標を検証し、最短で6月21日にはほとんどの規制の解除を目標としています。
しかし最近は順調な数値の発表により、まるでコロナが終わったかのように大勢で集まる、あるいはマスクなしで地下鉄やショップに出入りする人々も見られ、極端な反動がまた感染者を増やす懸念もあり、政府の対応はあくまでも慎重です。なお、公共の場でのマスク着用、ソーシャルディスタンス(1-2m)は最低6月21日まで義務づけられています。
以下はイングランドの現状と、5月17日からのルール概要で、次回は6月中旬に新たな見直しが予定されています。
人々の行動、施設、イベントなど | ステップ2【4/12~5/16】 | ステップ3【5/17以降】 |
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人々の会合と人数制限 | 屋外6名or2家族まで可 | 屋内6名or2家族まで、屋外は30名まで可能 |
在宅勤務 | 可能な限り奨励中 | 継続 |
レストラン、パブ、カフェなどの飲食関連 | 持ち帰り、および屋外席の営業のみ可能 | 室内も1団体6名までで営業可能 |
必需品以外の商店小売全般、理容・美容室や図書館などの施設 | 営業再開中 | 継続 |
スポーツ(個人、団体、教室など) | テニス、サッカー等の屋外スポーツ可。屋内のジムやプールは個人、または同居人との参加のみ可能 | 室内のグループ教室や競技も再開 |
イベント、映画館、劇場など | 一部試験ケースを例外除き全て休業中 *注 | 会場規模により室内は4,000人または定員の50%、10,000人または定員の25%いずれか少ない方で開催可能 |
冠婚葬祭 | 葬儀は最大30名、結婚式は15名まで参列可能 | 葬儀、結婚式、洗礼式など重要な冠婚葬祭は30名まで列席可能 |
美術館、博物館、テーマパークなど観光関連 | 動物園、遊園地、庭園など屋外のみ再開中 | 室内施設も人数制限の上、再開可能 |
国内旅行 - 宿泊施設など | セルフケータリング(貸別荘など)の独立した施設や野外のキャンプ場のみ営業中 | ホテル、B&Bも再開可能 |
海外旅行 | 正当な理由がない限り海外渡航は違法、違反は5,000ポンドの罰金 | 海外渡航は再度合法に、但し観光は当面限定12か国(地域)のみ(後述) |
*注 大型イベントの再開やソーシャルディスタンス撤廃に向けて、特定イベントにて政府が観客の入場を許可し、入場者には事前と事後2度のPCR検査を行い、感染率や安全性を検証中。サッカーFAカップや特定の映画館、クラブ、見本市などを対象に調査中。