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星野リゾート、九州・京都など国内外9軒を開業へ、需要予測とインバウンド再開も-「星野リゾートLIVE2021春」

  • 2021年4月19日

マスターブランド戦略からサブブランド戦略へ

星野氏

 星野リゾートは、コロナ禍が観光市場に深刻な影響を与え続けるなか、21年から22年にかけて新たに9施設を開業、または開業予定としている。星野リゾートの展開が手薄だった九州や、アフターコロナの需要回復が期待できる京都を中心に、サブブランドの「界」や「OMO」を展開する。

 このほどオンライン開催された同社の定例会見「星野リゾートLIVE2021春」によれば、今年1月に開業した「界 霧島」に続き、6月には「界 別府」、22年夏には「界 由布院」と九州エリアで3軒が相次ぎ開業。京都では4月に「OMO5京都三条」と「OMO3京都東寺」が開業したほか、秋には「OMO5京都祇園」も開業を予定している。

 このほか「OMO5沖縄那覇」が今年5月、北海道の「界 ポロト」が来年2月の開業を予定。海外案件では中国浙江省の「嘉助天台」が、今春の開業予定をコロナ禍の影響で延期していたものの夏には開業となる予定だ。

 こうした積極的な新規展開の背景について、星野リゾートの星野佳路代表は「発表済みの案件で中止や取り止めになったものはない。インバウンドが23年には19年並みに戻る可能性も出てきているので、そこへ向けて新規案件にもしっかりと取り組んでいく必要がある」としている。また星野代表は「従来のマスターブランド戦略からサブブランド戦略へ、ここ1、2年で戦略を大きく転換している」と説明。新規開業の9軒についても「界」が4軒、「OMO」が4軒を占めており、サブブランド戦略に基づく新規施設の展開となっている。

 地域的に重視しているのが九州だ。星野代表は「長い時間をかけて取り組んできた別府が今夏、いよいよ開業する。九州の展開が弱かったので、霧島に続いて別府が開業することは非常に重要だと考えている」と九州に注力していく方針を示した。

 「界 別府」は建築デザインを隈研吾氏が担当。「界の中に別府の温泉街を再現する」をコンセプトに、宿泊施設全体が一つの温泉街として設計されている。

 九州と共に重要地域に位置付けているのが沖縄・那覇だ。「那覇観光の中心である国際通りは、イメージが悪かった頃の軽井沢銀座的に見られてしまっている面がある。那覇観光を見直し、上質な滞在、楽しい時間をしっかりと紹介していけるホテルを目指していく」(星野代表)との方針だ。また沖縄観光の構造的問題として、夏以外はオフシーズンに位置付けられるため、稼働率を稼ぐ目的で単価を大幅に下げる結果、「生産性が低下し沖縄経済全体にも良い効果を生んでいない」と問題点を指摘。「沖縄は文化観光または自然体験に振っていくことが大事だ」とした。

 また、その意味で日本政府が推薦する「奄美大島、徳之島、沖縄北部及び西表島」の世界遺産登録の行方を注視している。同時に、白神山地や知床など過去の事例では、登録直後は需要拡大につながるものの、その後は需要が減少へ向かうパターンだったため、「奄美大島、徳之島、沖縄北部及び西表島」は同じ轍を踏まないことが重要だとも指摘。エコツーリズムの確立が必要だと説いた。

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