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地域開発の人材育成を目指し観光系学部を新設へ-立命館アジア太平洋大学キャリアオフィス岩森崇氏・学長室広報ジョーンズ佳世子氏

  • 2021年4月20日

多文化環境が生み出す地域への効果
地域・行政と一体となった支援

-多数の留学生の存在は、地域のインバウンド誘致にも貢献していると考えられます。コロナ前にはどれくらいの誘致効果があったと思いますか。

ジョーンズ 直近のデータではないのですが、2010年の別府市の調査では、年間2000人が海外から訪問していたという発表がありました。APUへの国内外からの訪問者は、およそ年間2万人です。お隣の中国や韓国からの留学生の保護者や、家族がやって来ることも多く、韓国人留学生の保護者の会が入学式に合わせてツアーを組み50人ほどまとまって訪問してくださったこともあります。

-行政や宿泊事業の関係者からは、APU留学生の存在が別府のインバウンド誘致の核になり得るとの声も聞きました。

ジョーンズ 観光関連事業者にアルバイトで採用される留学生も多く、学生たちの地元での活躍が別府を国際的な観光地へと印象付けることに貢献していると思います。中国語、韓国語、英語でインバウンド客を迎え入れることができ、また彼らの視点での大分の新しい魅力を発信してくれることで、より地元の観光を盛り上げているのではないでしょうか。

国際色豊かな環境

-しかしコロナ禍によって観光関連事業者のアルバイト採用が無くなってしまったのでは。

岩森 一時期はコロナ禍でアルバイトが無くなり、留学生だけでなく学生が皆、大変厳しい経済状況となりました。日々の生活が難しいと訴える学生もいました。しかし現在は状況が少し改善され、アルバイト採用も少し戻りつつあります。当時は、学校法人立命館として、教育における社会的責任を果たすため、またコロナ禍によって様々な困難に直面している学生を支援することを目的に、総額25億円の緊急支援策を策定しました。APUでも独自の経済支援策を設け、緊急支援寄付や国、大分県からの奨学金と合わせ、学生への支援を実施しました。

ジョーンズ その他には、学びを続けていくためにはまず食べるものが必要だとAPUの卒業生や教職員の有志が立ち上げた学生支援活動「APUハンズ」による食料配布が昨年5月から今年3月末まで続きました。また別府市が実施した学生エールプロジェクトという食糧支援や、市政への協力で受け取れる活動協力謝礼金などの雇用支援などを通じて地域からもご支援いただきました。

岩森 別府市や大分県からはさまざまな形で支援していただき本当に感謝しています。

-コロナ禍により観光産業は大打撃を受けていますが、観光産業を目指していたAPUの学生たちの進路志望にはどのような変化がありますか。

岩森 昨年度の就職では進路に迷う学生が多かったのと同時に、大手の航空会社や旅行会社をはじめ観光・旅行業界の各企業が採用を取り止めたり人数を大幅に抑制したりしたこともあって混乱が生じました。今年度の就職に関しても、コロナ禍の打撃が大きかった観光産業への志望者は大きく減ったのが実状です。例年は就職内定者のおよそ1割が観光、旅行、航空業界ですが、いまはそのような状況ではありません。