地域開発の人材育成を目指し観光系学部を新設へ-立命館アジア太平洋大学キャリアオフィス岩森崇氏・学長室広報ジョーンズ佳世子氏
多文化環境が生み出す地域への効果
地域・行政と一体となった支援
世界中から留学生を受け入れる立命館アジア太平洋大学(APU)。国際色の豊かさという点で日本でも有数の多国籍学習環境を提供している。キャンパスがある大分県・別府市では多くの留学生が観光関連施設で働き、インバウンド客の受入れ環境向上にも一役買っている。観光系の学部新設も検討しており、観光産業とのつながりがいっそう強まると思われる同大学でキャリアオフィス課長を務める岩森崇氏と学長室広報のジョーンズ佳世子氏にAPUの今を聞いた。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)
岩森崇氏(以下敬称略) APUは「自由・平和・ヒューマニズム」、「国際相互理解」、「アジア太平洋の未来創造」を基本理念として2000年4月に開学しました。この基本理念を体現し、国際社会に貢献する人材を養成するため力を入れているのが、多文化環境での教育です。世界中から集まる国際学生(留学生)が学生全体の半数を占め、教員も約半数が外国籍。キャンパスは文字通り多文化共生の場となっています。キャンパスの公用語は日本語と英語で、学部講義のおよそ90%が日英2言語によるものです。
開学以来、155の国と地域から留学生を受け入れており、昨年11月時点の学生総数(学部生、大学院生、科目等履修生等)は5573人。うち留学生が2617人となっています。
英国の高等教育専門誌による「世界大学ランキング日本版2021」では、対象278校のうちAPUは4年連続で西日本の私大No1、全国私大で5位、また九州では国立の九州大学に次ぐ2位となりました。ランキング指標のうち「国際性」については、前年に引き続き全国2位を維持しています。
なおアジア太平洋学部では観光学分野を設けて観光学教育にも力を入れており、国際認証である国連世界観光機関(UNWTO)の観光教育認証「TedQual」も18年に取得しました。
ジョーンズ佳世子氏(以下敬称略) コロナ禍に伴い留学生の日本入国ができなくなったものの、昨年10月~11月に入国規制が緩和された際に約200名が来日できました。学生たちはAPUの多文化環境に身を置くことにも魅力を感じてAPUを選んでくれていますので、一刻でも早く多国籍の学生が集い学ぶ多国籍な環境をキャンパスに取り戻したいとの思いで実施したのが大規模な入国支援策でした。入国規制が緩和された期間に来日できる航空チケットを準備してもらうよう案内をだし、日本到着後は、大学が責任をもってすべてを手配する体制を整備しました。健康観察期間の2週間に滞在する都内ホテルの手配や、東京から別府までの移動手段の準備や費用なども大学が負担しました。今春の入学者に対しても、緊急事態宣言の解除を見越して同様の体制を整えましたが、結果的に宣言の延長と入国制限の緩和がなされていないため、今春入学した約280人の大部分は、まだ来日を果たせていません。
岩森 入学辞退者はほとんど出ていません。いずれ入国規制が緩和される前提で、APUの国際色豊かなキャンパスで学びたいという希望を持った学生が多く、またオンラインで授業を受けられることも留学生たちが入学辞退に至っていない理由です。
ジョーンズ APUの柔軟な入学制度にも関係があります。もともと年2回、春と秋に入学ができる制度なのですが、今は特殊な状況ということもあり、本来は実施していないのですが春入学を秋に、秋入学を来春に、移行できる制度を作りました。APUのオンライン授業は双方向でリアルタイムですので、時差が大きすぎるなどの理由で約60名ほどが入学時期を変更しています。