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豪州の「今」を駐在員の視点から-補助制度終了に伴う旅行会社存亡の危機!? 豪州業界団体「AFTA」が果たす役割

給与補助制度「ジョブキーパー」が3月で終了
旅行会社へのアンケートから見える危機的な経営状況

ジョブキーパーがなければ旅行会社の32%が破綻と回答

 豪州の国境が2020年3月20日に閉鎖されてから約1年が経過し、海外旅行マーケットを完全に失った豪州の旅行会社の苦境はピークに達しています。

 豪州は州政府が大きな権限を持ち、国内移動であっても州境閉鎖の権限を州政府がもっています。各都市で新型コロナの市中感染が発生する度に、州境が閉鎖されて州間移動の制限がされていました。この州境閉鎖と再開が繰り返されたことにより、国内旅行の計画をしても直前に州境が閉鎖されるのではないかという懸念から、現在でも州をまたぐ国内旅行の本格的な回復にはいたっていません。

 また、豪州では元々国内よりも海外旅行の人気が高いことに加え、国内旅行は旅行会社を通さない旅行手配が多いことから、国内旅行が本格的に回復したとしても旅行会社の売上はコロナ以前の20%程にしかならないと指摘されています。

AFTAのホームページのキャプチャ

 今年2月にAFTAは在豪旅行会社へのアンケートを実施し1500社以上から回答を得ました。これによると、国境閉鎖以降、94%の旅行会社が90%を超える減収となり、43%の旅行会社は2023年までコロナ前の従来の売上レベルに戻らないと回答しています。また、ジョブキーパーが再延長されない場合、中小規模の旅行会社の82%のスタッフが雇用を失い、32%の旅行会社が破綻、52%の旅行会社が今後の存亡の危機に陥るとしています。

 未だまったく売上回復が期待できないホスピタリティ・観光産業を中心に業種を絞ったジョブキーパーの再延長が強く望まれ、AFTA等業界団体を中心に積極的なロビー活動が行われていましたが、残念ながら2021年3月28日でこの制度は終了することが確定となりました。

 ジョブキーパーは最も新型コロナウイルスによる影響を受けたホスピタリティ・観光産業の雇用はある程度繋ぎとめられていましたが、終了にともない2021年4月以降に廃業、従業員の解雇が大幅に増加するとみられています。コロナ禍以前のホスピタリティー・観光業界の豪州GDPへの貢献度は約14%となっており、このまま国境が閉鎖された状態が続いた場合、経済に与えるインパクトの大きさが懸念されています。

 海外旅行マーケットが完全に閉ざされるという未曾有の緊急事態の豪州旅行業界の中で、AFTAの存在が過去にないほど重要になっています。AFTA CEOのDarren Rudd氏は、「海外からのインバウンド旅行が復活するまで継続的な支援が提供されなければ、業界は持ちこたえることができない。業界を代表して、引き続き、連邦・州政府との交渉を粘り強く続けていく」とコメントをしています。

本稿はトランスオービット ケアンズ支店 杉崎賢一氏よりご寄稿いただいています。
※2021年3月26日(現地時間)現在の情報です。

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