豪州の「今」を駐在員の視点から-補助制度終了に伴う旅行会社存亡の危機!? 豪州業界団体「AFTA」が果たす役割

給与補助制度「ジョブキーパー」が3月で終了
旅行会社へのアンケートから見える危機的な経営状況

 オーストラリアでは既に数か月の間、帰国者隔離施設関連を除いて新型コロナウィルス市中感染が確認されていなく、ほぼ「COVID-FREE」の状態であると言えます。各州政府によって行われていた、飲食店、イベント会場等の各規制も大幅に緩和され、街中では「収束」といった雰囲気となりつつあります。

 一方国際往来という点では、豪州連邦政府は厳しい国境制限を昨年3月より継続しており、同じくコロナゼロ戦略で成功しているニュージーランドを除いて、国境再開、海外からの旅行者受け入れの目途はたっていません。

 今回は、AFTA(Australian Federation of Travel Agents)が今年2月に会員企業に対して実施したアンケートの結果、豪州政府による新型コロナ関連の補助制度などをレポートいたします。



AFTAとは

 今回の豪州旅行業界の危機に際し、豪州政府との間に立って旅行会社の救済交渉の中心的役割を果たしているのが、AFTA(Australian Federation of Travel Agents、オーストラリア旅行業協会)です。

 AFTAは、オーストラリアのツーリズムを刺激・奨励・プロモートすることを目的に、1957年に設立された業界団体です。シドニーを拠点に12名の委員を置き、専門化されたオーストラリアのツーリズムおよび豪州観光産業全体の安定的な利益の維持拡大を使命としています。

 豪州ではかつてカテゴリー1、2、3の3段階の旅行業免許制度がありましたが、2014年6月に免許制度が廃止され、現在では旅行業を開業するのに特別な免許や登録は必要ありません。

 免許制度の代わりに、一般消費者が旅行会社の信用度を図る目安となるものが必要となり、ベンチマークとしてAFTAがATAS (Travel Accreditation Scheme、AFTA認定基準制度)と呼ばれる認証制度を開始し、よりAFTAの重要性が増すことになりました。ATASの認証には、スタッフの資格、保険の加入、財務諸表の提出など、所定の認証要件を満たす必要があり、毎年更新時には再審査が行われます。

 AFTAは強制入会ではなく任意入会となっていますが、旅行代理店大手フライトセンターなど約2700の在豪旅行会社が加盟しており、弊社、トランスオービットも会員となっています。

企業への支援制度について

給与補助制度「ジョブキーパー」

 豪州政府は、新型コロナウィルスによる売上が減少した企業に対する支援と、労働者の雇用維持を目的とする、給与補助制度「ジョブキーパー(JobKeeper)」を、2020年3月30日より開始しました。

 この補助制度を利用できる企業は、3月1日以降の売上が30%以上減少(年間売上10億豪ドル未満)、または50%以上(年間売上10億豪ドル以上)減少していることが条件となります。

 補助対象となる従業員は、その企業で1年以上働いている従業員となり、フルタイムの正社員だけなくシフト制のアルバイトも含まれます。対象となる従業員の労働時間によって「ティア1」と「ティア2」に別れ、ティア1の従業員は2週間につき1500豪ドル(約12万6000円)、ティア2の従業員は750豪ドル(約6万3000円)が政府より企業を通して補助されました。

旅行会社支援プログラム

 2020年12月、豪州連邦政府は1億2800万豪ドル(約107億円)を拠出して、新型コロナの影響を受けた旅行会社に対し支援プログラムを実施しました。

 対象は年商5万〜2000万豪ドル(約420万円~約16億8000万円)の中小規模の旅行会社で、1500〜10万豪ドル(約13万円~約841万円)の支援金が支給されます。最大で4000の旅行会社が受給対象となり、2021年2月3日時点で、2164社に対し7700万豪ドル(約64億8000万円)が支給され、652社が申請中となっています。

 現在2回目の旅行会社に対する支援プログラムを検討しており、近日中にその内容が発表される見込みです。

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