コロナ禍後の世界でナンバーワンの観光文化都市を目指す-大阪観光局理事長 溝畑宏氏

鍵は「Green」と「LGBTQ」
周辺地域との相互連携で国際ゲートウェイ都市に

-2021年と2022年の国内観光客やインバウンド需要について、どのように想定していますか

溝畑 需要動向については基本的に楽観的です。第一にワクチン接種が始まったこと。そして昨年1年間で我々がコロナとの付き合い方を学び、どうすれば感染リスクを下げられるかを学んだからです。

 3月には関西で選抜高校野球も開幕しました。Jリーグはすでに開幕していますしプロ野球シーズンも始まります。3月、4月は卒業や入学、入社などで人の移動が活発化する時期です。ここでまず国内旅行、県またぎの移動が動き出す。次いでオリンピック・パラリンピックの準備が始まります。ワクチン接種もさらに進む。オリ・パラ期間中は少なくとも数万人規模の選手、スタッフ、それにスポンサー関係者も訪日する。そして9月にはインバウンド再開になると期待しています。最初は半径3時間以内の東アジアからの旅客が中心になるでしょう。2021年のインバウンドは2019年の3割ほどを見込んでいます。

 2022年はさらに多くを期待しています。北京冬季オリンピック・パラリンピックがあり、6月にはサッカーW杯も開催され、世界的に人が動き始め、2019年比で8割から9割レベルまで戻ってくれるでしょう。

-需要復活への期待がある一方、コロナ禍を経て地域住民が来訪者をどう迎え入れるのかが気になります

溝畑 私はコロナ禍でむしろ観光への理解が深まったと感じています。タクシーのドライバー、バスの運転手さんからクリーニング屋さんまで、観光客がいなくなって大変だと口々に言っています。観光客が減って休業している本屋さんもあります。皆が観光消費の裾野の広さを実感し、改めて観光の価値を認めてくれています。

 人口減少化社会の日本で観光の重要性が見直される一方で、海外から見れば安全、安心、清潔、美しい自然と四季、繊細なもの作り、歴史と伝統にも恵まれている日本は大変魅力的なはずです。コロナ禍後に世界の旅行が復活すれば日本がぶっちぎりの人気になると思います。

 問題は地域づくりや観光に携わる関係者にマーケティングやブランディング、収益性への意識が薄かったことです。ようやく最近になって、そうした意識が高まってきたのは希望となります。

-最後に観光産業の関係者に向けてメッセージをお願いいたします

溝畑 製造業や金融業界は、バブル崩壊やリーマンショックを経て、より強い経営体質を獲得してきましたが、観光業界はどちらかと言えばドンブリ勘定のまま。そう考えるとコロナ禍が結果的に観光産業のイノベーションを後押しし、変わっていくためのチャンスになるとも考えたいところです。ピンチはチャンス、そう考えることが大切だと思います。

 大阪観光局は日本の観光のショーケースを目指しています。外交や金融は東京にかないませんが、観光に関してはトップランナーになれると考えています。時代に先行して一歩先を行く。非常識を常識に変えていく。アフターコロナの時代に大阪は、ハングリー精神とパッションを持ち、多様性を受け入れる柔軟性と包容力で日本の観光をリードしていくつもりです。

-ありがとうございました