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コロナ禍後の世界でナンバーワンの観光文化都市を目指す-大阪観光局理事長 溝畑宏氏

鍵は「Green」と「LGBTQ」
周辺地域との相互連携で国際ゲートウェイ都市に

 大阪は、東京や北海道と並んで最もコロナ禍に悩まされてきたエリアのひとつ。観光産業のダメージも大きい。しかし大阪観光局は、観光需要は必ず戻りインバウンドも復活すると、ポジティブなメッセージを発信し続ける。観光庁長官、内閣官房参与などを経て2015年から同局の理事長を務める溝畑宏氏は、「大阪は観光のトップランナーになる」と明言し、ピンチはチャンスと捉え前を向く重要性を説く。(インタビュー実施日:3月18日/聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)

大阪観光局理事長 溝畑宏氏
-コロナ禍に直面して、大阪観光局はどのような対応を取りましたか

溝畑宏氏(以下敬称略) そもそも観光というのは災害やテロ、そして今回のような疫病といったリスクがつきもので、リスクと共存していかなければならない産業です。また観光は知的集約的な側面が強く、情報が大変重要な産業でもあります。ですから、まず過去の似たようなリスクに関する情報を集めました。たとえば、かつて世界的なパンデミックを引き起こしたスペイン風邪は、収束までに大体2年半から3年かかりました。今回のコロナ禍もこれを参考に、次の段階として出口戦略を考えました。リスクへの構えを十分に整えつつ出口を示して明るい未来、希望を掲げる必要があるからです。過去を振り返れば、疫病の流行や戦争といった大きな危機の後には新しいマーケットが開けるというのが歴史の教えるところでもあります。

 観光庁の長官を務めていた時期に東日本大震災が発生しました。当時、インバウンド観光を復活するためにビザの緩和やLCCの受け入れ促進をしたことが、その後のインバウンド躍進につながりました。残念ながら東北復興はまだ道半ばですが、日本全体のインバウンドは大きく前進しました。今回の危機に際しても、短期・中期・長期のそれぞれの出口戦略を立案し、大阪から日本を変えてやろうと考えました。

-具体的には何から手を付けたのでしょうか

溝畑 まずは観光産業の経営を守ることからです。2週間に1回は飲食店を含む観光関連事業者とミーティングを重ね、状況や要望を聞き取ったうえで政府に対して雇用調整助成金の枠拡大や融資制度の拡充、賃貸料に対する補助などを訴え、同時に需要回復に向けた施策をセットで行うよう要望しました。

 また需要回復については、まずは近場から小さく始めて広げていくことが重要であると、これも過去の経験から分かっていたので、いわゆるマイクロツーリズムから始めて徐々に県境またぎの観光を復活させようという出口戦略を考案しました。こうした出口戦略に当たって重要なのは、できない理由を挙げるのではなく、「どうしたらできるか」を考えることです。ですから大阪では昨年7月に新型コロナウィルス感染拡大防止ガイドラインをまとめ、いち早くMICEやイベントの再開に取り掛かりました。実際に昨年秋からはコンサートやボクシングの世界タイトルマッチ、格闘技のK1などを開催できました。

 その後は感染の再拡大に伴い予定していた花火大会やマラソン大会を中止せざるを得ませんでしたが、「どうすればできるのか」を示せた意義は大きかったと思います。事業者を励ませた点でも意味があったし、需要が必ず復活するというメッセージを発信できたことにも意味がありました。

 インバウンドについては国内観光より復活に時間がかかります。ですから、いつ再開してもいいような準備をしておくことを基本方針としました。昨年4月には中国のウェイボー(微博)と協議し、訪日旅行が復活したらすぐに共同で大阪観光の情報発信サイトを作る約束を交わしました。香港については、徹底的に動画配信することで、いつ往来が再開されてもいいように備えています。

 さらに大阪の観光の司令塔としては、世界情勢や各国の国境政策、株価などの経済動向などをチェックし日本の立ち位置を確認しながら、常にリスクを負い情熱を持って時代をリードする方向性を示すよう努めています。

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