航空会社のバックボーン活かし課題解決、観光立県での復活を目指す―沖縄県議会議員 西銘啓史郎氏
入域者数よりも人泊数、量から質への転換を
沖縄のいわゆる政治家一家に生まれながら、全日空に30年勤め、早期退職して地元に戻った西銘啓史郎氏。もともと政治家になるつもりはなかったというが、現在は前職の経験も活かし、観光立県を掲げる沖縄の県議会議員として精力的に活動している。観光産業の重要性を訴えて続けてきた西銘氏に、沖縄の現状と今後についての考えを聞いた。インタビューは3月10日に実施した。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)
西銘啓史郎氏(以下敬称略) 沖縄県議会議員として現在2期目を務める沖縄・自民党の議員です。議会の常任委員会のなかでは経済労働委員会に所属し、商工労働部、農林水産部、文化観光スポーツ部という3つの部署を管轄する委員長を務めています。
政治家になる前には全日空に30年勤めていました。54歳で早期退職し、地元である沖縄のために何かをしたいという思いを持って帰ってきたところ、その年の12月に衆議院議員を務める兄から秘書をやってみないかと声をかけられました。父も沖縄県知事などを務めた政治家で、長年二人の背中を見て生きてきたものの、私はどちらかというと政治は嫌いでした。ですが秘書として働くうち、政治のダイナミックな部分に魅力を感じるようになり、政治家を目指して政治家になった人とは違う背景を持つ人間が政治を動かす方が面白いのではないかと、自身も政治家の道を歩み始めました。
コロナからの立ち上がりにはやはり政治の力が必要です。航空会社での経験も活かし、観光立県の課題ひとつひとつを解決していきたいと考えています。私たちは県政では野党ですので、色々な意味でハードルも高いですが、国とのパイプや自民党本部との関係も駆使して交渉を進めていきたいと思っています。
西銘 コロナ前の観光入域者数は1000万人を超え、ハワイを上回っていました。宿泊日数や消費単価ではハワイの足元にも及ばないものの、ここ数年は右肩上がりで伸びていましたが、2020年は370万人、前年比では63%減でした。国際線は20路線以上ありましたが、定期便は未だに運航されておらず、国内線も減便や路線の休止が続いています。国際通りや平和通りの観光客も激減しており、商店街や観光施設協会からも非常に苦しい状況だと聞いています。
今回県として1700億円の補正予算を組みましたが、観光に関する予算は12億円ほどに止まっています。観光には7500億円の消費があり、経済波及効果も1兆1000億円と言われています。また沖縄のGDPにおいて観光収入は15%から20%を占めており、これは全国で1番です。観光はホテルや観光施設、レンタカーだけでなく、農業やお菓子メーカーなど本当に裾野が広い産業で、観光への依存度が高い沖縄では多岐に渡って影響が出ています。予算が国からもらえなければ、交渉してでも取りにいかなければなりません。
観光産業では解雇も始まっていますし、休業や倒産も増えていくでしょう。そうなった後にこれから頑張ろうと言っても簡単に動けるものではありません。知事に対しては一般質問でも、直接経済団体の方と会い、現状を認識したうえで必要なところに即対応をするよう求めています。瀕死の患者に痛み止めを与えても意味がありません。給付金や貸付などさまざまな手段があると思いますが、緊急手術が必要です。
これまでは自民党を中心に観光産業に関する勉強会を行ってきましたが、今は会派を超えて勉強会を実施し、議会でも多くの議員が観光に関する質問をするようになりました。とはいえ、どれだけ要請をしても、最終的に政府や県が動かない限り治療はできません。観光産業の実態に合った対策を行うことが最大の課題だと考えています。