itt TOKYO2024
itt TOKYO2024

「観光DX」の課題と可能性、バーチャルツアーやMaaSの未来は?

IDMとトラベルビジョンなどがイベント共催
観光地の「世界観」構築し旅行者ニーズに応えよ

コロナ禍で「普段はできない開発」、ライブコマースに脚光も

 セッション1では、総合OTAであるエクスペディアホールディングス代表取締役のマイケル・ダイクス氏とTrip.com日本代表の蘇俊達氏、そしてアクティビティなど旅ナカ商材に注力するGetYourGuideJapan日本オフィス代表の仁科貴生氏が登壇した。

 コロナ禍で各社とも打撃を受ける中、例えばエクスペディアは広告費を削減しつつ投資は継続し「普段はできないような開発」にも着手。例えば、取消や変更にも対応するチャットボットを英語版で稼働したほか、日本でも契約施設向けに需要動向の予測ツールを提供開始。また、既存レベニューマネジメント機能もチャネルマネージャー経由で利用可能とした。

 Trip.comでは、動画を配信しながら旅行を販売する「ライブコマース」が好調。1時間で3600件、7300万円の売上を達成するなど成果を上げていて、自治体とのコラボレーションも始まっている。

 また、今後の潮流についてダイクス氏は「多様性とインクルージョン」を挙げ、特に他の年代より旅行意欲の高い若年層対策で重要になると予測。一方、仁科氏は柔軟なキャンセルポリシーが重要になると語り、実際に「24時間前までキャンセルを可能にしたところ、コンバージョンは増えたがキャンセルは増えていない」とした。

 さらにDX推進の鍵についてはダイクス氏が「機械には機械で戦う」、蘇氏が「革新的なマーケティングとコンテンツ活用」と回答。仁科氏は、利益率の低いアクティビティ業界ではデジタル化が実現しにくいとした上で、例えば商品の価値向上でなく「スキップザライン」などによる不満の解消でも収益向上が可能であることから、そうした「高付加価値化」が重要になると予測した。

見えてきたバーチャルツアーの可能性
コンテンツビジネス化が鍵

 バーチャルツアーをテーマとしたセッション2では、ベルトラ代表取締役社長兼CEOの二木渉氏と、訪日外国人向けのガイドツアーなどを手掛けるノットワールド代表取締役の佐々木文人氏、日本人を中心に京都のまち歩きツアーを運営してきたまいまい京都代表の以倉敬之氏が登場した。

 いずれもコロナを機にバーチャルツアーに力を入れており、ベルトラでは学びや文化体験を中心に現在は国内外の220ツアーを扱い、無料を含め1万6000件の予約があった。また、ノットワールドはAirbnbなどで集客し、数人から100人ほどの企業団体まで週2、3回のペースで開催。日本人向けも月7、8回実施している。

 まいまい京都では53コースで9317名が参加。NHKの「ブラタモリ」に出演したガイドを起用するなどして、コースによっては一度に900人が集まるなど人気となり、7月以降は売上が前年超え。普段は立入禁止の場所に入れたり人数制限がないこと、ドローンなども活用できること、さらにリアルより双方向性が高いことなどがメリットとした。

 こうしたメリットについては他の2名も同意し、佐々木氏は「時空や距離感を一気に縮められる」と表現。また、二木氏は移動自体が困難な消費者も参加できること、予備学習や実際の旅行のきっかけになること、さらに「従来の移動手段を超えること」も挙げ、アマゾンの秘境ツアーを例に「実際に現地に行けるのは何人か」と指摘した。

 そして今後については、バーチャルツアーが「非日常」の体験でなく仕事の後に参加するなど日常の延長線上にあること、その場に来なくても参加できることなどから、旧来型の旅行業でなく「コンテンツビジネス」としての取り組みが求められていくとの予測で意見が一致した。