日本旅行、新中期計画を発表-法人営業を最重視、店舗は「最適化」

  • 2019年12月24日

 日本旅行は1月から、新しい中期経営計画「TRANSFORM 2025」に着手する。現在は2017年から2020年を対象期間とする「VALUE UP 2020」の最中で、2020年はその最終年との位置付けだったが、ゴールデンウィーク10連休などの恩恵もあって2019年に相応の業績を残せる見通しとなったことから前倒しを決めた。同社代表取締役社長の堀坂明弘氏は、FIT化やオンラインシフトが進むなかで、リアルエージェントとして「本当にあり方が問われている」と言及。現中計もそうした認識のもとで立案したものだったが、スピードが予想以上であるとし、新中計では「そういったものについて、さらに後手に回らないようにしたい。変革、体質改善をしていく」と目標を語った。

営業利益は倍増以上

 数値目標については2019年の決算後、2月末の取締役会で決定する予定であるため発表されなかったが、現中計で2020年に営業利益7億円を目標として掲げたのに対し、2025年には「20億円規模」とすることをめざす。また、「構造改革による収益基盤の確立」と「社員のモチベーション向上」も掲げる。

 基本戦略は「構造改革の推進」と「JR西日本グループの価値向上」、「イベントによる収益機会の取り組み」。構造改革では、リアルエージェントとしての強みを活かしつつ、旅行業以外を含めた新事業の創造や他社との連携を推進する。また、日本旅行の株式の8割を持つJR西日本関連では、「JR西日本のハウスエージェント」としてデスティネーションキャンペーンなどに貢献していく。イベントについては、ワールドマスターズゲームズ関西や北陸新幹線の敦賀延伸、大阪・関西万博などを想定する。

法人営業を再重視、店舗は運営体制を一元化

 事業別の戦略では、「法人営業」「個人旅行営業」「新たな事業展開」の3つに大別。このうち、最も力を入れるのが法人営業で、新卒と中途いずれも増員。新卒の採用数は19年度が90人規模であったところから、20年度は140人規模に増やす。これにより、東京や京阪神でのコーポレートセールスを推進するほか、グローバル営業やBTM営業との連携を強化する。本社でも、法人営業の推進や支援の体制を再構築する。

 個人旅行のうちパッケージツアーは、20年から22年にかけて50周年を迎えるマッハとベスト、赤い風船について「特徴を出し切れていない」との反省から、「こだわりのある」旅行や添乗員同行商品、オーダーメイド型ツアーなどを強化していく。販路では、ダイナミックプライシングなど環境変化に対応できるようシステム投資を増やし、オンライン販売を強化。

 一方、店頭については店舗運営の一元化に向けて、20年4月を目処として日本旅行サービスと日本旅行オーエムシートラベルを統合し、そこへ20年内に本体の直営店舗を吸収する。堀坂氏によると「合理化というより最適化」で、「重なったり効率悪いところは一部の店舗は少し集約」することもあるとしつつ、リアルエージェントとして店舗も引き続き重視し、コンサルティングを重視した「コンシェルジュデスク」の展開やオムニチャネルの取り組みも進めていく。

 新たな事業展開では、JR西日本グループへの貢献も意識し、東南アジアや中国での法人営業などグローバル営業を強化。また、「MaaS事業推進本部」と「デジタルイノベーション推進本部」も設置する。MaaSについては、海外事業者との連携も準備しているという。

 なお、BTM、MICE関連では、BTMにおいてエムハートツーリストやエルオルトなどグループ各社との連携や、システムの機能強化、「出張なび」の導入・利用拡大に取り組む。MICEは大都市圏の大企業などへの営業を推進するほか、全国大会などの受注増に向けてシステム強化や支援体制の充実をはかる。

 このほか、持続可能な開発目標(SDGs)について、グループとして達成をめざす「SDGs宣言」を発表。経営の中核に位置づけて、本社に推進チームを設置し、地方創生事業や教育旅行、環境保全関連ツアーなど旅行業に関わる取り組みを実施していくほか、女性や外国人の積極活用、ペーパーレス化、コミュニケーション強化なども推進していく。

 「TRANSFORM 2025」は6ヶ年の計画だが、前後半をフェーズ1、フェーズ2として分け、フェーズ1は採用強化やシステムなどの投資を中心とした「基盤整備」、そしてフェーズ2でそれの取り組みが結実していく「追加対応・刈り取り」の時期と位置付けていくという。

※訂正案内
(編集部 2019年12月25日11時53分)
訂正箇所:第6段落第1文
誤:20年4月までを目処として日本旅行サービスと日本旅行オーエムシートラベルを統合し、さらに20年内に本体の直営店舗の運営を担うリテール専業子会社を立ち上げて、前者を吸収する

正:20年4月を目処として日本旅行サービスと日本旅行オーエムシートラベルを統合し、そこへ20年内に本体の直営店舗を吸収する

(編集部 2019年12月25日16時15分)
訂正箇所:第3段落第2文
誤:日本旅行の株式の8割超を持つ

正:日本旅行の株式の8割を持つ

お詫びして訂正いたします。