観光庁、20年度予算は微増-青少年交流で新事業、プレクリアランスも
政府は12月20日、2020年度予算案を閣議決定した。このうち観光庁関係は19年度比0.5%増の714億8900万円で、一般会計分は国際観光旅客税(いわゆる出国税)による歳入510億6100万円を含む2. 2%増の680億9400万円、復興枠は24.7%減の33億9500万円。観光庁は概算要求で、一般会計として19年度予算比10.7%増の737億400万円、復興枠として24.7%減の33億9500万円、合計で8.4%増の770億9900万円を要求していた。
観光庁によれば、出国税は外国人旅行者3300万人、日本人旅行者2100万人から1人1000円を徴収することを想定。出国税による歳入は合計で540億円となるが、このうち510億6100円は観光庁に一括計上したのち、一部を法務省などの関係省庁に移し替える。残りの29億円は、皇室の美術品類を展示公開している三の丸尚蔵館の整備費用で、例外的に宮内庁所管の宮廷費として扱う。
20年度の観光庁予算は19年度と同様に、出国税の使途に関する基本方針で示された3項目で構成。各事業は「ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備」「我が国の多様な魅力に関する情報の入手の容易化と観光産業の基幹産業化」「地域固有の文化、自然などを活用した観光資源の整備等による地域での体験滞在の満足度向上」に大別されている。
このうち最も大きなウェイトを占める快適な旅行環境の整備については、約2%減の273億8100万円を充当する。事業別では「円滑な出入国の環境整備」に16%増の81億8400万円、「円滑な通関等の環境整備」に17%増の35億3000万円を投入して特に重点化。従来の顔認証ゲートなどの整備に加え、新事業として台北の桃園国際空港で、訪日台湾人旅行者の割合が大きい一部の路線を対象に、外国人の入国手続きの大半を出発空港で実施するプレクリアランスを導入する。
そのほか、空港での各種手続きを迅速化する「FAST TRAVELの推進」に9%減の31億7600万円を、公共交通機関におけるキャッシュレス決済などを促進する「公共交通利用環境の革新等」に20%減の44億円を、「旅行安全情報共有プラットフォームを通じた旅行者の安全の確保」に49%減の1億2900万円を充てる。
情報入手の容易化などについては5%増の156億5300万円を充当。このうち半分強を占める「戦略的な訪日プロモーションの実施」は4%減の87億1700万円で、訪日旅行者の増加が見込まれるメキシコと中東地域を新たな重点市場に加えるほか、日本政府観光局(JNTO)の事務所が無い中国内陸部や北欧での設置準備を始める。そのほか「ICTの活用などによる先進的プロモーションの実施」に23%増の63億1300万円を投入。新規事業では「教育旅行を通じた青少年の国際交流の促進」に1000万円を充て、課題解決のための協議会を運営や、国内における普及・啓発活動などに取り組む。
地域での満足度向上については6%増の237億3800万円を充当。全事業を通じて最も予算額が大きく、19年度は20.0倍増の100億円を措置した「文化資源を活用したインバウンドのための環境整備」は2%減の98億4000万円。同じく19年度に20.3倍増の50億8000万円を措置した「国立公園のインバウンドに向けた環境整備」は35%増の68億6200万円とした。そのほか新規事業として「国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業」に20億円、「ナイトタイム等の活用による新たな時間市場の創出」に10億円を予算措置する。
税制改正要望については、化粧品や時計など比較的高額な商品を扱う自販機が登場していることを受けて要望していた“自動販売機の免税化”が認められた。訪日客向けの消費税免税制度を拡充するもので、パスポート写真と顔写真を照合する機器を設置するなど、従業員を介さずに免税販売手続きを実施できる場合は、免税店の許可要件とされてきた人員の配置を不要とする。21年10月から施行する予定。
組織・定員要求では、訪日客に非常時の安全確保のための情報を提供する「外客安全対策官(仮称)」のポストを新設し、本庁・地方運輸局で計9名を増員。そのほか、オーバーツーリズム対策強化のために本庁で2名、出国税を投入する補助金事業などの各地における適切な執行のために地方運輸局で4名を増員する。