ANAのA380とJALのA350、導入に秘めた戦略は-各担当者が講演
ホノルル線の機材戦略については、通常のリゾート路線のそれとは「真逆」の戦略を選んだという。リゾート路線では通常、旧型の機材やシートを活用してコストを抑え、ツアー客にリーズナブルな料金の旅行商品を提供するのが定石だが、「NHはハワイでは後発であり、新しい取り組みをしなければ市場に割って入れない。また、幅広い客層に多くの選択肢を提供したかった」との思いから、ビジネスクラスとエコノミークラスだけに限らず、ファーストやプレエコ、そしてカウチシートまでを用意した。そのことについて牧氏は「ハワイのホテルは宿泊客に豊富な選択肢を用意している。そのホテルの選択肢と1対1で対応できるくらいの座席の選択肢を、520席もあるA380型機なら用意できると考えた」と語った。
このようにして約3年をかけて準備し、無事に導入したA380型機について、今後も取り組んでいかねばならない課題としては、ホノルル線におけるプレゼンスの向上を挙げた。「JLは長年の実績があり、ホノルルマラソンのような取り組みも成果を上げている。ハワイアン航空(HA)は乗った瞬間からハワイを感じさせる強みがある。では、NHはどのようにして存在感を出していくか」が大きな課題という。
そのための方策として、A380型機にハワイらしくウミガメをモチーフとした特別塗装を施し、「FLYING HONU」と名付けたことについては、「当初は3機とも同じデザインにする予定だった」と説明。その上で「1号機のデザインを社長にプレゼンした際に『いいね。で、2号機はどうなる?』と問われて、慌てて2号機と3号機のデザインを限られた予算内で制作した」との秘話も明かした。結果的に3機の「FLYING HONU」は、表情と色がそれぞれ違うものとなっている。
牧氏は苦労もあった「FLYING HONU」の特別塗装について、副次的な効果も大きかったことを伝えた。機内販売用にキャラクター人形を作り、それほど期待はせず「初便だけは多めに15体」を搭載したところ完売し、2便目にその倍の30体を搭載すると60体の購入希望があり、その後は各便に60体を搭載しているという。そんな嬉しい誤算もあったことから、今後もホノルル線におけるプレゼンス向上のためには、積極的にさまざまなアイデアを投入していく意欲を示した。
JAL、「すべてを変える思い」でエアバス機導入
第2部では、JL経営企画本部経営戦略部機材グループ長兼A350導入準備室長の木村卓爾氏が「エアバスA350について」と題した講演を行った。JLは13年10月にA350型機の導入を発表したが、それまでボーイング機を中心に運航してきたJLが、初めてエアバス機の導入に踏み切った理由について、木村氏は「個人的な見解だが」と断った上で「11年に経営破綻を経験したことが大きかったのでは」と振り返った。