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ANAのA380とJALのA350、導入に秘めた戦略は-各担当者が講演

JLのA350-900型機  木村氏は経営破綻後の状況について「新たな経営陣からは『これまでやってきたことがすべて間違っていたと考えるくらいのつもりで仕事をすべき』と言われた」と説明。売り上げと費用については、「売り上げは水物だが、費用は大きくは変わらない。だからこそ、良い物をできるだけ安く購入すべき」との姿勢を改めて叩き込まれたことを明かし、「それがあったからこそのエアバス機材導入だったと思う」との見方を示した。

 また、エアバスとの大型商談に踏み切ったことについては、「当時は各社が新型機材の導入を次々に発表しており、エミレーツ航空(EK)が10兆円規模の購入計画を発表するなど、大型商談が次々と固まっていた」と時代的な背景も影響していたことを解説。時機を逸すると製造スロットを失い、将来的な機材計画が滞る懸念があったため、就航予定の6年前も前に導入を決定する必要があったことなどを伝えた。

 しかしエアバスとの取引が初めてということもあり、導入に向けた同社との交渉は難航。木村氏は「当初はエアバスも、JLが本当にA350型機を導入するのか疑問に思っていた部分があったのでは」との見方を示した上で、「ボーイングとは企業文化も違い、それまでのような至れり尽くせりのサービスはなかった。最初は何を相談しても返事は『ノー』ばかりだった」と明かした。それでも、膨大な作業をこなして交渉を重ねていく過程で、JLの熱意が伝わってからは「エアバスも変わった」という。

 エアバスとの交渉で最も苦労したことについては「仕様に対する、メーカーとしての考え方の違い」を挙げた。「他社はひと通り必要な装備を整えた上で、そこから不要な装備を削っていく」のに対し、「エアバスは必要最小限の装備をベースに、必要な装備を付け足していく発想」で、その違いに大いに戸惑ったという。

 JLはA350型機に大きな信頼を寄せており、現在保有している40機のB777型機を、順次A350型機に置き換える予定。木村氏はその理由として「燃費の良さを含めて運航費用の削減効果が大きい。国内線で年間1機あたり2億円を削減ができる」と説明。その上で最大のメリットは「コクピットの仕様が(A350シリーズの)どの機材においても同じなので、機材間でパイロットの移行が簡単なこと。パイロットが不足している状況で、これは大きい」と強調した。第1号機は9月1日から羽田/福岡線で使用する予定で、現在は慣熟飛行を重ねているという。

 なお、木村氏によれば、B777型機は1995年からの24年間で旅客機として1412機が売れたが、一方のA350型機は2015年からの4年間で893機が売れ、「このまま行けばベストセラー機の仲間入りは確実」という。