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MICE注力のメルボルン、FSCの直行便で視界良好【視察レポート】

アクセス、自然環境、インフラ、体験素材、食のすべてが抜群
ホテル建設ラッシュ、フィリップ島には新ビジターセンターも

自由時間の充実度も大きな魅力に

トラムは市中心部がフリーゾーンで無料

 直行便の座席供給力がMICE都市としての必要条件だとしたら、十分条件は何か。それは自由時間の満足度ではないか。インフラや自然環境などが整備されているのは当然の前提だ。つまりイベントや会議などMICEの主目的を高いレベルで達成できる要素が整っているのはあくまで必要条件。そのうえでオーガナイザーが期待するのは、主目的以外の自由時間にも参加者が十分楽しみ、旅行全体の満足度が高くなることであるはずだ。

 その意味でメルボルンは極めて魅力的なデスティネーションといえる。

 メルボルンは街の魅力が一定のエリアにコンパクトにまとまっているうえに、公共交通機関が素晴らしく整い、外国人旅行者でも手軽に徒歩や公共交通機関で街を存分に楽しめる。メルボルン中心部は碁盤の目状に街づくりされており、きわめて分かりやすいうえに、中心部を巡回するトラム(路面電車)は無料で利用できる。15年1月からは、観光スポットとしても人気のクイーンビクトリアマーケットやドッグランズを含むエリアもフリーゾーンに加えられ、さらに使いやすくなっている。

ナショナルトラストによって保護されている歴史的アーケード、ロイヤルアーケード

 フリーゾーンの外側、例えば郊外のビーチリゾートであるセントキルダまで足を延ばす場合は料金が発生するが、「myki」カードを購入しておけば、電車、トラム、バスといった公共交通機関のすべてを利用できる。同カードは、事前に入金しておき利用した分の料金が引かれていく課金制カード(日本の交通系ICカードと同様の使い方)で、購入も簡単。駅だけでなくコンビニなどでも入手できる。

 参加者個々が自由時間に街を楽しめるだけでなく、これだけ街歩きの環境が整っていると、街歩き体験をイベント・プログラムに組み込むことも可能だ。例えば、観光スポットごとに現場を訪れないと分からないクイズを用意するのも一興で、例えば「州会議事堂の正面階段は何段?」といったガイドブックやネットにも答えのないクイズを市内の6、7ヶ所で設定し、3時間ほどの時間制限を設けて回答を探すゲームを「トレジャーハント」の名称でプログラム化している業者もある。チームビルディングにも活用可能だろう。

2万人規模の国際ロータリー会議の誘致も成功

オリンピックパークの一部、メルボルンパーク内では新しいコンベンション施設の建設も開始

 メルボルンとしてもMICE誘致体制を強化しているところで、今回の現地視察も日本の旅行会社5社を招いた。3年前にはメルボルン・コンベンション・ビューロー(MCB)とビクトリア州政府観光局の本部組織を合体し、観光の魅力とMICE都市としての魅力を一体的にアピールしやすい体制を構築。MICE誘致にもその効果が現れつつある。

 例えば今年11月には「エホバの証人の国際大会」が開催予定で、グローバル公共交通サミット2021や世界眼科学会2022、国際結晶学連合会議2023、国際遺伝学会議2023、世界哲学会議2023などの誘致にも成功。さらに世界200以上の国と地域から2万人もの参加者が集まる「2023国際ロータリー会議」の開催も獲得している。MCBによるとメルボルンは19年に獲得が決まった案件だけで5億豪ドル(約375億円)の収益と6000人以上の雇用創出を実現したという。

 MCBのチーフ・エグゼクティブ・オフィサーを務めるジュリア・スワンソン氏は、「MCBは100人前後のグループから数万人規模の案件まで、さまざまなビジネスイベント需要をサポートする体制を整えており、空港での出迎えやウェルカムバナーの掲出など、さまざまな特典も用意できる。日本を管轄する上海事務所には30人のスタッフがおり、観光局の日本事務所と共に日本からのビジネスイベント需要に関するサポートを提供している」と説明し日本からの需要獲得にも意欲を示す。