顧客はクリスチャン-大阪・イスラエル専門旅行会社の新たな一手

第1種取得で受注型企画旅行に専念
てるみくらぶ問題が遠因に

-ご自身の宗教的なバックグラウンドについて教えて下さい

石田氏 石田 私は京都で、それほど熱心ではない仏教の家庭に育ちました。JTBに入社して京都の店舗で働き始めた頃に、外国人旅行者のお世話をするために英語を学ぼうと思い、宣教師に安価で英語を教えてもらったのがキリスト教に触れたきっかけです。教材として聖書を使ったり、宣教師の人柄に影響を受けたりしているうちに、20歳でクリスチャンになりました。

-JTB時代の経歴についても教えて下さい

石田 最初の12年間は京都の一般向けの店舗でカウンター業務や営業などを務め、その後の10年間は「ルックJTB」などの海外旅行商品の企画や造成を担当しました。その当時はイスラエル旅行をほとんど扱っていません。行きたい人がいませんでしたし、旅行代金も驚くほど高かったです。

 しかしその終わり頃に、クリスチャンの知人から「イスラエルに行きたいのですが、10人ぐらい集めればツアーは可能ですか」と問い合わせがあり、イスラエルとの関わりが始まりました。その後は西宮の店舗に異動して5年間務め、この時期にはかなりの人数をイスラエルに送客し、ある年の春には300人を送ったこともあります。その後の5年間は関連会社で総務関係のマネジメントをし、最後の10年間は「旅物語」のコールセンターで管理業務に就きました。

-HTCはどのようにして顧客を獲得しているのですか

石田 基本的には待つだけで(笑)、DMなどを送ることはありません。カギはJTB時代からお付き合いしている牧師の皆さんで、信頼関係のもと参加者を紹介していただいています。参加者は大抵リピーター化して、数年おきに参加してくださる方が多いです。完全に紹介だけで成り立っている世界ですが、自然増が続いて現在に至ります。

 日本の土着の宗教団体については、本部などに営業すればまとめてお客様を獲得できますが、キリスト教の場合は勝手が違います。教会は日本全国に沢山ありますが、通う信者の数は少ないことが多く、一方で教会どうしのつながりが強かったりするので、ある教会が「こんなツアーがあります」と参加を呼びかけると、他の教会からも集まります。

-世の旅行会社はOTA時代を生き残るために悪戦苦闘していますが、そういった悩みは…

石田 全くないです(笑)。HTCのビジョンはあくまでも「クリスチャンに相応しいツアー」を提供し、喜んでいただくことです。同じ聖地を訪れても、クリスチャンとノンクリスチャンでは興味の持ち方が違います。極端に言えば、ノンクリスチャンの方々は教会や遺跡などを見ればある程度満足されるかもしれませんが、クリスチャンはその場で静かにお祈りをしたかったりします。また、クリスチャンにとっては聖地を訪れる時間帯なども重要で、1日の時間の使い方が根本的に違うのです。

 また、一般的な観光ガイドでもキリスト教に詳しい方はいますが、クリスチャンはそれ以上に専門的な質問をします。だからガイドも含めて皆、クリスチャンでないとうまくいきません。キリスト教に関心があるノンクリスチャンは歓迎しますが、参加される際には、十分に趣旨を理解していただくようにします。

 これらの理由から、ツアーは受注型企画旅行として催行し、キリスト教に関心がない方が参加される可能性がある募集型は扱いません。すべて教会と牧師を通して集客し、綿密にツアーを企画しています。