新体制で「変革と創造」、「安心・安全」の取組を再強化-年頭所感(2)
KNT-CTホールディングス代表取締役社長 丸山隆司氏(※隆は生の上に「一」が入る)
18年の日本経済は、緩やかな回復基調のもと企業収益や雇用・所得環境の改善が続いたが、個人消費は力強さを欠いた。旅行業界については、海外旅行は東南アジアが好調を維持し、中国、韓国、欧州が回復傾向を強めるなど比較的堅調に推移したが、国内旅行は相次ぐ自然災害の影響で大きな打撃を受けた。訪日旅行は関西国際空港の一部閉鎖などの影響もあったが、年間では史上初めて3000万人を超えた。
19年の経済の見通しについては、各種の経済対策や来年の東京五輪開催に向けた動きもあり、引き続き景気は緩やかな回復を維持すると期待されるが、米中摩擦の影響などもあり、先行き不透明な状況が続くだろう。
このような情勢の下、当社グループは、昨年4月に発足した地域旅行会社と訪日旅行の専門会社などを基軸とする新しい営業体制に移行し、5月に「個人旅行事業の再構築と団体旅行事業の拡大・強化」を骨子とする中期経営計画を策定した。近畿日本ツーリストとクラブツーリズムの一体化による商品造成力・販売力の強化とWeb販売の拡大などを強力に推進している。
今年は5月に新天皇陛下の即位と改元があり、GWの10連休は海外旅行を中心に大きな旅行需要が喚起される。大阪でのG20、東京五輪に向けたイベント、ラグビーW杯などの大型イベントや、大河ドラマや朝の連続テレビ小説の舞台は、旅行需要を喚起する仕向け地として大きな期待が寄せられている。こうした旅行需要をしっかりと捉え、お客様のご要望にお応えし、夢や感動を共有できるよう、皆様に愛される企業グループをめざしていく。
日本旅行代表取締役社長 堀坂明弘氏
近年、OTAやサプライヤーの直販化に対し、我々総合旅行会社がどうあるべきか、という議論がさまざまな場でされている。環境変化が劇的な速さで進むなか、将来に向けて持続的な発展をするために、総合旅行会社には何が必要か、というのもテーマの1つだ。
その1つの答えが「旅行者の安心・安全の担保」。昨年は日本の各地で度重なる自然災害が発生した。関西国際空港が閉鎖され、訪日外国人を含む多くの旅行者が孤立するなか、当社では空港事務所のスタッフが情報を収集し、お客様に状況や見通しを説明し、善後策をお伝えした。旅行先で事件や災害が発生した際に速やかに対応し、お客様の安全の確保、家族などへの連絡など「安心・安全」に向けた取り組みができるのはまさに総合旅行会社であり、我々の存在意義の1つだ。
「お客様のニーズを的確に捉えた、企画性に富んだ上質な旅の提案」も、答えの1つ。企画商品はもちろん、今後拡大が見込まれるイン・アウトを含む交流事業、地方創生事業など、総合旅行会社が従来培ってきた知見とスキルを十二分に発揮し、具現化していくことが我々に求められており、OTAとの差別化につながるものだと考えている。
今年は17年から20年までの中期経営計画の折り返し地点となる。中計では、創業者のDNAでもある「マーケット・イン」の精神を大事にしている。インバウンド、教育旅行、MICE、BTM、インターネット販売の各重点分野は毎年堅調に伸びているが、マーケット・インの精神をより強化することで、更なる進化を遂げたい。不安定な世界情勢、消費税率の改定などマイナス要素もあるが、今年はGWの10連休や改元も控えており、ビジネスチャンスも多いと期待している。
日本旅行は昨年実施された「JCSI(日本版顧客満足度指数)調査」で、初めて旅行業種での「顧客満足度」1位を獲得できた。これは、マーケット・インの精神のもと、日々CS活動に取り組んできた賜物であり、社員一人ひとりがお客様に誠意をもって対応した結果への評価であると、大変誇らしく思う。この評価を糧にさらにお客様に支持される旅行会社となっていきたい。
阪急交通社代表取締役社長 松田誠司氏
昨年は日本各地で多くの自然災害に見舞われたが、グループで総力を挙げて「お客様第一」を念頭に対応した。一方、国際情勢においては、治安の改善などで欧州をはじめ中国、韓国など全般的に完全なる回復基調となった。当社では欧州を中心としたチャーターの拡充、GWの2隻のクルーズチャーター、南極クルーズチャーターなどを実施し、成功裏に終わった。
当社では、将来に向けて持続的に成長し続ける「骨太企業」へと成長するべく、17年度より3ヶ年計画でさまざまな施策に取り組んできた。19年度はいよいよ仕上げの年。強みである募集型企画旅行は、お客様の昨今の志向を反映した商品開発に一層注力し、国内・海外全方面でさらに競争力のあるものにする。法人団体や訪日旅行は、募集型企画旅行に次ぐ第2の柱として強化する。
企業体質改善に着手している時こそ、全グループ従業員にはこれまでに囚われずに本来のあるべき姿に向けて、各々の持ち場で「業務の棚卸し」を実行してほしい。そうすることで真に盤石な組織へと変貌を遂げたい。
今年は新たな年号となり、東京五輪を来年に控え、各所において活発な動きが予想される。そうしたなか、従業員一人ひとりが企業家のつもりで主人公意識をもち、真に面白みを感じ業務にあたることで、あらゆる変化に対応できる強い企業として発展できるだろう。本年もお客様の声に耳を傾け、満足いただける旅行サービスの提供に心を尽くし、社会に必要とされる企業であり続けるよう邁進していく。
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