「skyticket」のアドベンチャー、燃やす海外OTAへの対抗心
最初からグローバル市場に照準
中村氏「まだ何も始まっていない」
航空券販売サイト「skyticket」を展開するアドベンチャーの代表取締役社長を務める中村俊一氏はこのほど本誌の取材に応じ、今後の事業展開に関する考えを語った。8月に発表した18年6月期の連結業績では、取扱高は前年比107%増の779億円、売上高は187%増の151億円となり、各利益も3割増に拡大するなど順調に成長を続けているように見える同社だが、それでも「まだ何も始まっていない」と語る中村氏はどのような将来を見据えているのか。詳しい話を聞いた。
-前期も大幅な増収増益となりましたが、これまでの歩みをどのように評価していますか
中村俊一氏(以下敬称略) 業績については全く満足しておらず、僕たちとしてはまだ何も始まっていない準備の段階にあると感じている。最初から日本市場だけで戦う気はなく、グローバルに展開することを考えていたが、ようやく昨年に韓国、台湾、香港、シンガポールで広告を開始したところで、まだ米国やヨーロッパなどには拡げられていない。アプリのダウンロード数も、国内の612万に対して海外は88万とまだまだ少ない。
広告については、ブッキング・ホールディングスやエクスペディアの年間費用は4000億円から5000億円程度に上るが、僕たちはわずか60億円超にとどまる。取扱高に至っては彼らの10兆円に対し、僕たちは前期が779億円、今期の目標が1000億円で、100分の1の規模しかない。2桁成長を続ける欧米や中国のグローバルOTA大手とは、あまりにも大きな隔たりがある。
彼らには「グローバル市場で存在を示すには、最低でも取扱高1兆円はないと」と言われている。現在の中期計画では2030年の目標として1兆円を掲げているが、本当はそれよりも早く達成したい。僕たちが1兆円に届く頃には、彼らは20兆円くらいに増えているかもしれないが。
当初の目標では、すでに30ヶ国くらいに支社があり、取扱高も1兆円に達しているはずだった。しかし支店は1つもなく、取扱高は1000億円に満たない。開発やマーケティング、新たなサービスの提供など、すべてのスピードがグローバルのOTAと比べて遅い。日本での「skyticket」の浸透度についても、テレビCMなどのマス広告を展開しているわけではないので、まだまだと考えている。
-決算資料では中長期的な経営方針として「広告費の拡大を継続する」と強調しています
中村 今期は広告費として約15%増の75億円を投入する。今は短期的な利益を出そうという気はなく、広告費は最大限に投入して、同時に他社よりも効果を上げることに注力している。国内のリアルエージェント大手が、新聞広告だけで数百億円を使っていることを考えても、現在の僕たちの費用はまだまだ少ない。
広告費のほとんどは、リスティング広告などのネット広告に投入している。そのほかにもテレビやラジオ、新聞など、まだ展開していない領域は沢山あるので、今後もできる限り広告を打ち続けたいと考えている。
欧米のOTA大手の戦略で最も参考にしているのはブッキング・ホールディングスで、彼らは長期間にわたり事業を拡大し、売上高と利益を伸ばしている一方、広告費は落としていない。また、テクノロジーへの投資に力を入れているところにも共感していて、ウェブサイトの基礎設計についてはお手本にしている。
ただしブッキング・ホールディングスなどとも、いずれは戦うことになる。例えば楽天やじゃらんの主戦場である国内の宿泊予約に、彼らはすでに進出している。現在の僕たちの規模ではかなわない相手だが、最終的には戦うのだから、その姿を見据えて参考にしたいと考えている。