国税庁、旅行会社に出国税を説明、事務負担に理解求める
日本旅行業協会(JATA)は6月25日、国税庁の担当者を講師に招き、旅行会社を対象とする「国際観光旅客税に関する説明会」を開催した。国際観光旅客税(いわゆる出国税)は、来年1月7日以降航空機または船舶で日本を出国する日本人および外国人の旅行者に、一律で1人1回1000円を徴収するもの。旅行会社は航空券料金への上乗せなどのかたちで、旅行代金と併せて支払われた出国税を「特別徴収義務者」である航空会社や船会社に支払うこととなるため、事務負担が増加することが予想されている。参加者数は90名超に上った。
講師を務めた国税庁課税部消費税室課長補佐の齋藤保人氏は冒頭で、現政権が観光を成長戦略の柱の1つと位置づけ、高度な観光政策の展開に向けた財源確保のために出国税の徴収を決めたことを説明。財源を充当する施策については「ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備」など3分野を挙げ、受益と負担の関係が曖昧にならないよう、負担者の納得が得られるものとする旨を強調した。出席者に向けては「新たな事務が発生するなど負担があると思うが、我々としても丁寧な対応に努めるので協力をお願いしたい」と呼びかけた。
出国税の概要については、公用機または公用船での出国者や、2歳未満の小児、航空機や船舶の乗組員など、一部の旅客は課税対象外となることなどを解説。日本入国から24時間以内に出国する通過客についても対象外とするが、その際には「運送契約において一(いつ)の航空券が発行されること」を条件とし、旅行者が別々のタイミングで日本入国・出国のための航空券を申し込んだ場合などは、課税対象となることなどを説明した。
そのほか、出国後に悪天候などやむを得ない理由で外国に寄港できずに帰国した場合の出国、施行日の1月7日より前に締結した運送契約についても課税対象外とすることを説明。ただし1月6日までに締結した運送契約でも、7日以降に出国日の変更などをおこなった場合は課税対象になることを強調した。
なお、国内外の運送事業者は旅客の搭乗前に出国税を徴収し、出国日の月の翌々月末日まで国に納付するが、過誤納の際には納付した運送事業者が書類などを準備し、差額分の還付を税務署または税関に請求することを説明。ただし「旅行業者は運送事業者との仲介をする立場上で、手続きに関係することがあるかもしれない」とも述べ、理解を求めた。
決済後のキャンセルについては「国際観光旅客税を含めて返金するのが筋だが、税法上の規定がない。各自が規約や約款などで定めるなど、民間の取引にお任せする。必要に応じて航空会社と協議する場合もあると思う」と述べた。国税庁は今年4月に「国際観光旅客税に関するQ&A」を公表(リンク)。今月には英語版もリリースしている。
齋藤氏による説明の後は質疑応答を実施。すでにJATAにも多く問い合わせがあるという「旅行パンフレットや条件書などの契約書面において、新税をどのような形で記載すればよいか」との質問については、JATA法務・コンプライアンス室長の堀江眞一氏が「旅行代金に含まれる場合と含まれない場合の2つが考えられる。含める場合は当然『旅行代金に含まれるもの』の欄に書き、含まれない場合は旅行代金には含まれないが通常かかる経費として書く。空港施設料などと同じ扱いと考える」と説明した。
そのほか外国船社の日本地区総代理店(GSA)を務めるある会員企業は、GSAが「特別徴収義務者」にあたるか否かを確認。これに対しては齋藤氏が、GSAはあくまでも販売を代行する立場で、特別徴収義務者にはならない旨を示した。外国船社に対する出国税の周知状況を問う質問については「我々としても不足していると感じている。財務省関税局や国土交通省の港湾局を通じて、国内の代理店から周知するしかなく、検討を進めている」と説明した。
JATAは来年1月7日の出国税導入の前後において、旅行会社の徴収漏れや旅行者の混乱などが発生しないよう、今後は旅行者への案内方法などに関するガイドラインなどを制作する予定。「お客様から国際観光旅客税の名前でお金をいただきながら、納税されないことがないようにしてほしい」という。