日本航空、中長距離LCC設立を正式発表、「3年で黒字化」
日本航空(JL)は5月14日、都内の本社で記者会見を開催し、新たに国際線の中長距離専門LCCを設立することを正式発表した。設立については前週に一部のマスコミが報道していたところ。商号や代表者は未定だが、今後は7月に準備会社を設立し、2020年の夏ダイヤからB787-8型機2機による運航を開始する予定。4月1日付で社長執行役員に就任した赤坂祐二氏は「流石に初年度は難しいが、3年で黒字化しなくては」と意欲を示した。
拠点は20年に向けた機能強化が予定される成田で、就航先については「アジアや欧米など」と述べるにとどめ、具体的な候補地は明言しなかった。なお、JLが提供した資料によれば、運航可能な範囲はユーラシア大陸のすべて、メキシコを含む北米、大洋州、北アフリカなど。これらのなかからJLの未就航エリアなどに就航して、日本人海外旅行者および訪日外国人旅行者を広く取り込む考え。
使用機材については、JLのB787-8型機が通常は200席程度であるところを、40%から50%ほど増加して300席程度で運航する考え。社名やブランドなどはJLとは一線を画し、JLのシンボルである「鶴丸」のデザインなども前面に打ち出すことはないという。なお、新会社はJLの連結子会社とする方針だが、ビジネスチャンスの拡大に向け、外部の出資者を募る可能性もあるとしている。資本金や出資額などについては追って決定する。
JALグループはこれまで、ことあるごとに「FSC事業を磨き上げる」と強調し、LCCについては短距離国際線と国内線を運航するジェットスター・ジャパン(GK)に出資する程度にとどまっていた。今年2月末に発表した17年度から20年度までの「ローリングプラン2018」でもLCC事業の計画については明かさず、「事業領域を拡げる」「新たな領域を伸ばす」とのみ示していたところ。しかし今回の発表では「お客様に新たな価値を提供することで、フルサービス/ローコスト両軸での成長をはかる」としている。
新たなLCC事業においては「安心」「安全」「シンプル」「先進的」をコンセプトの基盤とし、テクノロジーを活用した新たなサービスを積極的に導入するとともに、利用者には一律に高品質なサービスを提供するのではなく、必要とするサービスを提供する考え。JLの国際線利用者のうち「サービスについては『それほど必要ない』と考える層」などをターゲットに、需要を喚起する。集客については旅行会社による販売も重視し、常務執行役員経営企画本部長の西尾忠男氏によればシステム接続による協業も検討するという。
コストについてはデジタル技術による作業プロセスの省力化、JLのインフラの使用などにより削減に努め、ユニットコストについては「FSCの半分」をめざす。なお、赤坂氏は新会社の運営については「FSCである我々がLCCを始めようとすると、コストを削る発想に行きがちだが、それだけでは摩擦が生まれる」とも語り、「JLからもスタッフを送るが、FSCを出発点としない人に任せたい。これまでとはまったく違う、新たなビジネスを組み立ていくことが必要」と強調した。