旅行業の人材戦略、女性・若手の活躍に必要な視点-経営フォーラム

  • 2018年3月14日

働き方改革やダイバーシティ推進などに加えて
業界の魅力と将来性を伝える努力を

「働きがい」でベストカンパニーになった旅行会社

萬年氏  では、旅行業の先進企業はどんな取り組みをしているか。現地オプショナルツアー販売のベルトラは、「働きがい」に関する調査・分析機関「Great Place to Work」(GPTW)の日本法人による調査で、2016年から2年連続でベストカンパニーに選ばれた。

 ベルトラの萬年氏によると、同社の社員構成は7割が女性。半数が20代から30代の若手で、女性の管理職や子育て中の女性も多い。また、国内外あわせて約3割が外国籍のスタッフだ。

 年間取扱額は17年、前年比32%増を記録。会員数も16年の100万人から17年には150万人と大幅に伸びた。NPS(ネットプロモータースコア:顧客推奨意向の数値化)調査でも、16年から17年の1年間で20%のスコアアップを達成した。堅調な推移を続けるなか、同社が最も重視して取り組んでいることは、従業員の満足度。「従業員が大切にされていなければ、お客様を大切にしようという発想にはならない」という考えからだ。

 社員を大切にすること。それは「口先だけではなく、社員自身が大切に扱われていると実感するまで、あらゆることをする必要がある」と萬年氏。同社の取り組みは、スキルアップ支援の研修制度や有休100%消化などワークライフバランスへの配慮、積極的な情報開示など多岐にわたるが、根幹は常にそこにある。

 例えばワークフロームホーム(在宅勤務)制度。婚姻による転居で、通勤が難しくなった1人の社員の相談を受けて始まった。こうした1人ひとりに向き合う会社の対応は、「出産・育児後も復帰しやすい」など従業員の安心感の醸成にもつながっているという。

 このほか、ミーティングでは数値目標よりも、各種施策に対する思いを重視した情報伝達をおこない、若手社員とのコミュニケーションでは経営陣からも話を聞きに行く。「努力と行動を称えあう」のも同社ならではの取り組みで、「VELTRA Star of the day」制度は日々の業務で活躍した社員を月曜日の朝礼で紹介。「内容を社員に共有することで、次のヒーローの排出を促す。その積み重ねで、スーパーバイザーからマネージャー、管理職へとステップアップにもつながると思う」と話す。