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多様化する海外旅行市場で旅行会社の役割は-ツーリズムEXPOより

  • 2017年10月25日

求められる旅行会社の企画・マーケティング力
ミレニアル世代への新しいアプローチも不可欠

ロペス氏「One size fits allの時代は終わり」

クオニイジャパンのロペス氏  パネルディスカッションでは、クオニイジャパン代表取締役社長のビクトー・ロペス氏が、ランドオペレーターの立場から市場の現状を報告した。同氏は世界の海外旅行市場の拡大、旅行者のFIT化の加速、アジアの旅行者による人気デスティネーションへの集中などについて説明し、「サプライヤーはイールドマネージメントを強化しており、そのことが仕入れに大きな影響を及ぼしている」と話した。加えて、人気のデスティネーションでは、旅行者の増加によって物価が上昇しており、大量の旅行者を受け入れることに地元住民からの反対も大きくなっているとし、「マスツーリズムは限界にきている」と分析した。

 その上で、日本の旅行会社が直面する課題を指摘。IT用の航空座席の確保、海外旅行者の世代交代やSITの増加によるニーズの変化と多様化、低い歩留まり、依然として首都圏に集中している航空ネットワークなどを挙げ、「環境が変わってもパッケージツアーの形は基本的に変わっていない。『One size fits all』の時代はもう終わっている」と持論を展開した。

 ロペス氏は、FIT化やSITによる旅行形態の変化、ミレニアル世代の出現、女性・富裕層・LGBT・リピーターなど顧客の多様化が進んでいることについて述べた上で、デジタルのアプローチの重要性を強調。「従来、旅行会社は消費者の言葉の壁に介在してビジネスを展開したが、もはやその壁はない」と語り、「現在ではスマートフォンのなかに市場のすべてがある。OTAはそれを理解しているが、伝統的な旅行会社の取り組みは遅れている」と指摘した。特にソーシャルメディアには同じ価値観を共有する人々のコミュニティが存在するため、「マーケティングのチャンス」と位置づけ、積極的に活用することを呼びかけた。

 このほか、ロペス氏は日本旅行業協会(JATA)のTeam EUROPE 観光促進協議会が選定した「ヨーロッパの美しい村30選」にも関わっていることから、その効果についても報告。最も成功した例は北ウェールズのコンウィで、30選に選ばれる以前との比較で700%の増加率を記録したと説明し、「ヨーロッパ市場全体は低迷したものの、30選の村への送客は増加した。要するに企画の力だろう」と高く評価した。あわせて、このほど「ヨーロッパの美しい街道・道20選」を策定したことも紹介した。