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トップインタビュー:ドイツ観光局アジア・オーストラリア地区統括局長の西山氏

30年までに日本人150万泊へ
旅行会社は「FITにできないツアーを」

-130万泊の達成に向けて、今後はどのような中期的な取り組みを実施しますか

西山 旅行者のリピーター化に注力する考えで、日本市場では旅行が大好きな「旅行中毒」の人と、海外旅行にまったく関心がない人に二極化していると思う。短期的な結果を出すためには、ドイツ旅行の経験の有無にかかわらず、旅行好きの人に徹底的に訴求するのが現実的との考えから、リピーター向けのオンラインキャンペーンを強化している。

 ドイツ観光局は昨年末から消費者向けの観光パンフレットの配布をやめ、BtoCの取り組みはすべてオンラインでおこなっている。我々の調査でも、旅行を予約する日本人の7割から8割はインターネットで予約をしており、残りの2割から3割が旅行会社経由などとなっている。

 今年は「エイビーロード」など、旅好きの消費者が集まる旅行検索・情報サイトや、「フォートラベル」などの口コミサイトを中心に、ドイツ旅行が当たるキャンペーンなどを展開している。ソーシャルメディアも積極的に活用しており、3月にはTwitterの公式アカウントを開設し、20代や30代の人々を主要ターゲットとして情報を発信している。

 このほか、将来のリピーター層である若者への取り組みも強化している。これまでにも大学に出向いてドイツ魅力をアピールしているが、今年はさらにドイツ文化センター、ドイツ学術交流協会と共同で、大学のドイツ語学科などで年に数回アピールする場を設ける予定だ。語学留学などに加えて、もう少し気軽にドイツを楽しめるよう、卒業旅行などレジャーでの旅行についても訴えていきたい。

-旅行会社との関係について、お考えをお聞かせください

西山 ドイツを訪れる旅行者はシニアが多く、そうした層に対しては、旅行会社のチャネルを引き続き活用する。しかし日本政府観光局(JNTO)によれば、16年の出国者数は5.6%増の1711万6420人と増加したが、旅行会社経由の旅行の予約は減少しているのが現状だ。これはパッケージツアーの魅力が低下し、リピーターに訴求しにくくなっているということではないか。旅行者のFIT化が進むなか、商品を利用してもらうためには旅行会社自体が変わるべき時を迎えていると思う。

 旅行会社に対しては、商品の魅力をアピールして送客に結びつけるための提案を続けていく。各旅行会社のウェブサイトで予約キャンペーンを実施するよう働きかけているところで、地方観光局と一緒に、現地の交通機関や観光施設で利用できる「シティカード」などを提供するなど、積極的に協力していく。

 加えて、引き続きドイツの各都市やサプライヤーのプロダクトを商品化するよう働きかける。すべてのプロダクトがFIT向きというわけではなく、テーマが明確でFITでは難しいものはたくさんある。例えば、ドイツにはハイデルベルク城など貸し切りで晩餐会を実施できる城は沢山あるが、FITでは不可能だろう。旅行会社の皆様には、我々の開催するワークショップなどの機会を活用して情報収集し、その会社だからこそできる「ワン&オンリー」のツアーを造成していただきたい。

 リピーターの興味は幅広いため、新たにツアーを作っても定番ツアーほど集客できない可能性があることから、新商品を提案するチャレンジをためらっている会社もあるだろう。しかし最初は30名のみの参加者でも、徐々に参加者が増えれば定番化の可能性はある。ドイツは周遊すべき魅力的な都市や村がたくさんあるので、是非チャレンジしていただきたい。

 一方で定番ツアーも重要だ。ロマンチック街道とスイスアルプス、パリを周るツアーといった定番ツアーに参加したいという、ドイツ初心者のニーズはまだある。定番ツアーは今後も販売していただき、旅行者のリピーター化につなげていただきたい。