キュナード、20年までに日本人3倍増-QEで新規客獲得
キュナード・ラインの日本での販売などを担うカーニバル・ジャパンで、キュナード・ライン事業部長を務める児島得正氏は、8月30日に開催した業界誌向け会見で「キュナードにとってアジアの最重要市場は、中国ではなく乗客数が最も多い日本。日本のシェアを拡大していきたい」と意欲を示した。同社によれば日本、韓国、中国本土、香港、台湾、シンガポールなどを含む「アジア」のうち、日本が占める割合は7割強。「日本人乗客数を2020年までに現在の2.5倍から3倍まで増やしたい」との考えで、日本発着クルーズの実施で新規客の獲得をめざす。乗客数については非公開としている。
同社は今年の3月に客船「クイーン・エリザベス」(QE。9万900トン、乗客定員2081人)で初の日本発着クルーズを実施。18年3月には大阪発着クルーズも実施する予定だ。両クルーズともにQEのワールドクルーズの途中で日本に寄港する区間クルーズで、7泊8日で1本ずつ実施。発売と同時にほぼ完売している。19年は日本にQEを配船し、横浜発着で2本のクルーズを実施する予定で、1本目は4月19日から28日までの9泊10日で函館、秋田、金沢、境港、釜山、熊本の八代の6港に寄港。2本目は4月28日から5月5日までの7泊8日で広島、釜山、長崎に寄港する。
児島氏は「17年は試験的にQEの日本発着クルーズを実施したが、19年以降は(日本に配船して)本格的に実施する」と強調。19年のクルーズについては「1年半以上先の話だが、すでに6割の予約が入っている」と好調をアピールした。全客室の2割を占める上級クラス「グリルクラス」は、発表後1ヶ月半で完売したという。
日本発着クルーズでは、キュナードの客船に初めて乗船する、あるいはクルーズそのものに初めて参加する新規顧客の獲得に注力する。従来の主要顧客層であるシニアや、経済的にゆとりのあるアッパーミドル層をターゲットに設定するとともに、新たな取り組みとして3世代の取り込みを強化する。児島氏は「QEはワールドクルーズの印象から、『長く乗船するので料金も高い』というイメージがあるが、日本発着クルーズは16万円台から」とリーズナブルさを強調。また、現在はキュナードのクルーズを利用する日本人の9割が欧州クルーズに参加しているが、「日本発着クルーズが増えれば状況は変わるのでは」と話した。
日本発着クルーズ以外では、主力商品である欧州へのフライ&クルーズについてもアピールを強化する考えを示した。キュナードは19年については、QEが毎年実施している4ヶ月超の世界一周クルーズを中止する予定で、中・短距離のクルーズや設定日を増やすことで市場の拡大をめざす考え。日本人については欧州に加えて、オーストラリアやアラスカのクルーズの販売を強化する。
児島氏はそのほか、キュナードが日本人向けのサービスを強化していることもアピールした。直近では、日本人から要望が多かった客室内の湯沸かしポットを、QEと「クイーン・ヴィクトリア」「クイーン・メリー2」の全室に設置。一部の上級客室にはコーヒーメーカーも用意した。
なお、日本市場では現在、旅行会社経由の販売を強化し、取引する旅行会社の数を増やしているところ。これまでは第1種旅行業者に対して直接営業を実施してきたが、今年からはクルーズバケーションとオーバーシーズ・トラベルを指定代理店として、第2種および第3種旅行業者への販売促進を強化しているという。児島氏は2社が他のクルーズ客船の日本販売総代理店(GSA)を担当していることについて述べた上で、「ブランドとして競合はしていない」と説明。2社が有する旅行会社のネットワークに期待を示した。