JATA志村氏、北方領土視察を報告、「SITに可能性あり」
日本旅行業協会(JATA)は7月20日の定例記者会見で、このほど理事長の志村格氏が参加した「北方四島における共同経済活動に関する官民調査団」の報告をおこなった。同調査団は6月27日から7月1日にかけて政府が派遣したもので、志村氏はJATAおよび観光分野を代表して参加。会見では「北方領土については戦後、観光目的の渡航が禁じられているが、観光の可能性を探るための調査をおこなえたのは画期的なこと」と語った。日本政府は北方領土問題が解決するまで、国民には北方領土に入域しないよう要請している。
北方領土における観光関連のインフラについては「そもそも観光地ではないので、道路や交通手段、宿泊施設などは整備されていない」と説明。一方で「火山や温泉、動植物など自然が豊富で、ロシア系住民の生活文化にも触れられる。エコツーリズムやSITのポテンシャルがあるのでは」と期待を示した。
同調査は、日露両政府が取り組む経済・人的交流促進の取り組みを受けて実施されたもので、今回の視察では国後島・択捉島・色丹島の3島を訪問。調査団は政府や地方自治体、観光業界や水産業界などからの69名で構成し、観光業界からは志村氏のほか、北海道で観光船を就航する道東観光開発代表取締役社長の高橋晃氏など4名が参加した。
一行は、国後島の沖合で入域手続きを済ませたのち、5日間の行程で現地の文化会館や宿泊施設などを訪問。地元関係者との意見交換会やレセプションも開催した。
志村氏は今後のツアー造成の可能性については「いきなり不特定多数の旅行者が訪れることは難しいだろう」と予想。その上で「日露双方が受け入れられるよう、一定の条件下で参加者を募集するツアーや、根室など道東からの日帰りクルーズなどにより、少しずつ交流を深めていくことが現実的では」との見方を示した。
▽政府の出国税導入に向けた動きは「情報を収集中」
志村氏はそのほか、政府が旅行者の出国時の課税に向けて検討を進めているとの一部報道について「唐突に出た話なので、JATAとしては情報を収集しているところ」とコメント。「観光について安定した財源があることは望ましいが、旅行者の負担が上がることには反対」との姿勢を示した上で、この日は「現時点では徴収の対象や使いみちが分からないため、良いとも悪いとも言えない」と述べるにとどめた。
報道では、政府が日本から出国する日本人や外国人を対象に、航空券などの代金に上乗せする「出国税」を課す案を検討中で、18年度の財政改正要望に組み込む計画があると伝えている。