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新春トップインタビュー:観光庁長官 田村明比古氏

17年は「観光先進国」に向けて本格始動
日本の旅行業界も「変わるべき」

―今年は日露首脳会談を受けて、極東ロシアへの旅行者拡大に向けた調査事業に1000万円の予算を措置されましたが、ツーウェイツーリズム振興についてのお考えは

田村 かつての行政機関は海外旅行の振興に一生懸命取り組んできた。例えば9.11の米国同時多発テロが発生した際には、当時の国交省観光部がミッションを米国に派遣し、その後に大臣同士で日米間の観光協力について覚書を結んだ。そのような形で、16年にはロシアだけでなく、韓国や中国などとも2国間協力を進めてきた。

 今日では、訪日旅行は日本経済に幅広く寄与することが国民に理解してもらえるようになってきた一方で、国が海外旅行を促進することの大義名分が立ちにくくなってきている。そのような状況のなかで我々ができることは、他国との2国間関係を強化することだ。官民一体で、さらには相手国の業界とも協力して双方向交流の動きや環境を創り上げていくことが重要だと考えているので、続けていきたい。


―日本の旅行業界は産官学を挙げて観光振興に取り組んでいますが、旅行会社の業績は概して芳しくありません。今後の業界の振興についてはどうお考えですか

田村 旅行業界はずいぶん前から変革を迫られてきたが、思ったほど変わっていない。やはり、依然として1970年代や80年代の成功体験から抜けきれない企業が多いのではないか。最も大きなシェアを占めている国内旅行も、代わり映えのしないサービスの旅館に泊まって観光地を巡る、昔ながらの商品とは違う新しい提案がまだできていないと思う。

 海外旅行は、豊かな中高年を中心にフリークエントトラベラーはいるものの、一般的に気軽に海外に行こうという雰囲気が広がっている訳ではない。そして、訪日旅行についてはまだまだ取り扱いの規模が小さいことが大きな課題だ。

 また、近年はオンラインでの取引が増えているが、日本の旅行会社の多くはまだ対応できていない。もちろん新たな変化に対応している企業もあるが、1万社以上ある旅行会社のうちの何割が対応できているだろうか。行政としてその辺りを含めて変革を支援すべきなのか、すべきならどのようなことができるのかについては、今後の旅行業法制検討会のなかで議論していきたい。

 さらに、ヨーロッパなどでは旅行会社自らがリスクを取り、チャーターやホテルなどの事業を統合しているところもあるが、日本の旅行会社のなかでリスクを取ろうとする会社はまだまだ少ない。リスクを取ったが故に財務的に危なくなる可能性もあるので一概には言えないが、日本の旅行業界は色々と変わるべき時期に来ていると思う。


―ありがとうございました