新春トップインタビュー:観光庁長官 田村明比古氏

17年は「観光先進国」に向けて本格始動
日本の旅行業界も「変わるべき」

-16年には菅官房長官などの閣僚がさまざまな観光関連イベントに出席され、「政治主導」で観光先進国をめざすことをアピールしました

田村 以前は、観光庁など一部の関係者だけが観光振興の重要性を唱えていた。観光の、特に訪日旅行の日本経済における重要性が一般国民にまで認識され始めたのはここ1、2年のことだ。ビジット・ジャパン事業が03年に始まり、観光庁は08年に設立したが、その頃の訪日外国人旅行者数は多くても800万人程度だった。国内旅行市場と比べて重視するほどの存在ではなかったのだろう。

 しかし、近年になり訪日旅行の消費額が自動車部品の輸出額と同程度の約3.5兆円にまで成長し、ようやく重要性が広く認められるようになった。20年に向けてますます省庁連携による取り組みは加速していくので、観光庁として旗振り役をしっかりと務めていきたい。


―旅行業法の改正に向けた検討が進められていますが、今後の議論についてのお考えは

田村 今回は旅行の安全と質を確保するためのランドオペレーターへの規制と、着地型旅行商品の促進に向けた環境整備について旅行業法を改正する。また、旅行業界はオンラインの取引がかなりのシェアを占めるようになるなど、大きく変化してきているので、現行の旅行業法の体系で十分に対応できているのか否かについては検証しないといけない。

 これまでは旅行者保護の観点からさまざまな規制を強化してきたが、そのような限られた環境のなかで、創意工夫を活かした旅行者がワクワクするような商品開発がなされているのかについても検証すべきだろう。今後はかなり幅広いテーマについて議論していただこうと考えている。議論には長い時間を要するかもしれないが、適切な時期に一定の取りまとめをおこないたい。


―16年は地震や台風など複数の大きな自然災害が発生しました。緊急時の対応や復興支援についてはどうお考えでしょうか

田村 我が国は常に災害のリスクを抱えている国なので、まずはいざという時に訪日外国人を含む旅行者が安全な場所に避難し、正確な情報を知ることができる体制作りが必要になる。次に、災害発生後の対応が重要だ。災害が発生した地域では、観光施設が損害を受けたり観光客が一時的に減少したりすることは避けられないので、熊本での地震のような大規模災害に対しては、国として補正予算を組んで早急に対応をした。

 しかし、そこまで至らない中小規模の災害もたくさんある。それらについては、例えば自治体が災害引当金のようなものを積み立てておくなど、いざという時に対応できるような体制を普段から構築しておくべきだろう。