EXPOで苦情対応セミナー、個別約款活用など呼びかけ-JATA

  • 2016年10月9日

服部氏  日本旅行業協会(JATA)はこのほど「ツーリズムEXPOジャパン2016」で、旅行会社向けの「苦情対応セミナー」を開催した。初心者編として毎年実施しているもので、今回は苦情対応や必要な法務を学ぶ約30名が参加。講師はJATA消費者相談室室長代行の服部豊氏が務め、約2時間半にわたり2部構成で、旅行業約款の概要や過去の事例について解説した。

 服部氏は冒頭で「何年経っても多いのは募集型企画旅行の取消料の問題」と述べた上で、近年の傾向として「法的な根拠を問うお客様が増えている」と説明。参加者には旅行業約款に対する知識と理解を深めることに加えて、説明書面や契約書面に詳細な取引条件を明記することなどを推奨した。

 第1部の「苦情対応に不可欠、旅行業約款の基礎と概要の確認」ではクレーム対応の基本的な流れを説明。クレームの発生から解決に向けた交渉に至る流れにおいては、特に「会社側の法的責任の有無の調査・判断」と「解決策の提示とお客様との交渉」の2つが重要であることを強調した。

セミナーの様子  このうち法的責任の有無については、旅行業約款に基づき「取消料をめぐるトラブルについては、まず契約が『成立』しているのか否かを検証する」「手配旅行について旅行会社は注意をもって手配する義務はあるが、手配を『完成』させる義務はない」など、基本的なルールや対応策を説明。解決策の提示については「いきなり法律の話を持ち出すと却ってクレームが増大する」と注意を促した。

 旅行業約款については「標準旅行業約款」に加えて「フライ&クルーズ約款」や「募集型PEX約款」、そして今年に入り導入された「受注型BtoB約款」など、さまざまな個別認可約款があることを説明。「昨年に導入された募集型PEX約款は認可を取得する会社も増えていると聞いている」と伝え、JATAのウェブサイトで提供している申請書のひな形を活用し、認可を取得することを呼びかけた。あわせて今後しばらくは、新たな個別認可約款が導入される予定はないことも伝えた。

 第2部「お客様からの苦情事例を通じた法的責任の有無」では、JATAが作成したクレーム対応マニュアル「たびクレ」の掲載事例から11例を紹介。「企画旅行では参加者に外務省の海外危険情報を説明しなければ債務不履行になる。しかし万が一の場合のために一筆求められることがあっても、そこまでする義務はない」など、具体的な対処法についても解説した。服部氏は、JATAのウェブサイトには10年以上にわたる約430件の苦情事例情報が掲載されていることを説明した上で「類似した事例は参考にしてほしい」と呼びかけた。