南ア、16年の回復に自信、中小事業者の成長に期待

  • 2016年6月2日

日本の旅行会社は多様なコースの造成を
秋に全世界的キャンペーン

SMMEsの力を観光業へ
中小の旅行業者専用のスペースを用意

ドラケンスバーグの観光協会はウクハランバやレディスミスなどの自治体の集合体ブースのなかで出展  今年で37回目を迎えたインダバでは、初めてSMMEs(Small, Medium and Micro-sized Enterprises)と呼ばれる中小事業者に焦点を当てた。SMMEsは年間売上が4500万ランド(約3億2400万円)以下の事業者。南アフリカ共和国政府は、国家開発計画で「中小企業の活性化」を施策の1つに掲げており、観光省も15年に策定した観光インセンティブプログラムのなかで、旅行業界の中小企業の支援を打ち出している。

SMMEsのパネルディスカッション。クワズールナタール州議員はじめ、南アフリカ観光ビジネス協議会、コンサルタント会社、旅行産業パートナーシップの代表が登壇  今回はSMMEs専用の商談スペースを設けたほか、SMMEsを対象にしたワークショップや、国内の大手旅行会社や海外のバイヤーとのネットワーキングセッションを開催した。観光副大臣のトコジレ・カーサ氏はセッションの冒頭で、「SMMEsが成長するにはチャンスとともに困難もある。だからこそこの分野の発展に注力したい。インダバが将来のビジネス拡大につながることを期待する」とコメント。SMMEsの専用ポータルサイトの構築や、経営相談などの今後の具体的な支援策も示した。

 SMMEsの発展について議論するディスカッションでは、資金繰りなどの問題が提示され、さらなる成長のためには「Uberのような革新的なサービスや、体験の新しいパッケージ化が必要」などの意見も挙がった。

「ヒドゥン・ジェム・ゾーン」では熱心な商談がおこなわれた  SMMEsの専用スペース「ヒドゥン・ジェム・ゾーン」には、南アフリカ特有の素材を紹介する70社の商談スペースを設置。出展したSMMEsの1社で、カラハリ砂漠エリアのさまざまな素材をプロモーションする「カラハリ・レッド・デューン・ルート」のダーク・ピナー氏は、「これまではノーザンケープ州のブースの一画で出展していたが、自分たちの名前を出すことで、特に海外市場にアピールがしやすくなった」と話す。実際に、同社のブースには日本のバイヤーも訪れた。

「カラハリ・レッド・デューン・ルート」のピナー氏  SATのホワイトハウス氏も「そこにしかない、面白いものを体験するにはSMMEsが必要」とコメント。ダーバン観光局マーケティングオフィサー、シザ・ルツーリ氏も、「地元や地域をよく知っていて、素材に愛情を持っていることが強み」とSMMEsの価値について述べた。このほか、SATのトレード担当者などによる「トレードトーク」がおこなわれたほか、今年もサプライヤーが1社あたり5分間の持ち時間で自社の素材やサービスをアピールする「スピードマーケティング」が開催され、SMMEsが約200人のバイヤーを前にプレゼンテーションを実施した。

「スピードマーケティングセッション」は和気あいあいとした雰囲気のなかで進行  今年のインダバは、世界的な景気の停滞やトレードショー間の競合などもあり、10年のサッカーワールドカップ大会前後の年に比べると規模が小さくなっているものの、商談数は昨年よりも3000件ほど増加し、ネットワーキングや話し合いの場も増えた。観光業は南アフリカの新経済成長戦略における6つの重点分野の1つであるため、今後も投資は続く見込みだ。日本の旅行会社にとっても、同国を中心とするアフリカの旅行業者と直に接点を持つことができ、視察ツアーで素材を体験できるこの機会を、ビジネス拡大のために最大に活用していただきたい。

取材協力:南アフリカ観光局
取材:平山喜代江