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政府、20年の訪日客数を4000万人に-「観光先進国」へ

  • 2016年3月30日

▽規制・制度は17年に「抜本的見直し」-若者の海外旅行も議論

発言する安倍氏(写真提供:首相官邸)  新たなビジョンではこれまでの議論を踏まえた上で「観光産業の革新」「観光資源の魅力向上」「ストレスフリーな旅行環境の実現」の3つの「視点」を掲げ、そのなかで10の改革方針を明示した。合計で35項目に上る施策の柱として注力する。

 「観光産業の革新」の視点については、「観光産業の規制・制度の見直し」では現状に対応できていない規制や制度を17年中に「抜本的に見直す」とし、旅行業については地域密着型の事業者が着地型旅行商品を企画・提供しやすい制度を検討することを明示。ランドオペレーターについては登録制などにより実態を把握するとともに「問題のある事業者への適切な指導・監督ができる制度」を導入する考えを示した。通訳案内士については業務独占規制を見直し、サービスの供給拡大をはかる。そのほか経営人材の育成や民泊のルール整備、宿泊業の生産性向上なども推進する。

 そのほか「新しい訪日市場の開拓」では欧米豪の富裕層などをターゲットにしたプロモーションや、ビジット・ジャパン事業の重点20市場のうちビザが免除されていない中国、フィリピン、ベトナム、インド、ロシアについて戦略的に取得要件の緩和を進める。また、MICEに対する支援体制を「抜本的に改善」する。「観光地の再生・活性化」については20年までに「世界水準のDMO」を全国に100組織立ち上げる。観光地再生ファンドなどにより、疲弊した地方を活性化することも目標に掲げた。

 「観光資源の魅力向上」の視点については、「公的施設の開放」として赤坂の迎賓館などを通年で一般公開するなど大胆に開放する。「文化財の改革」では、20年までに文化財を核とする観光拠点を200ヶ所整備するとともに、多言語解説など1000事業を展開して支援する。「国立公園の改革」では20年までに全国の5つの公園を「世界水準のナショナルパーク」へと改善。「観光地の景観向上」では20年を目途に、全都道府県および全国の半数の市区町村で景観計画を策定する。

 「ストレスフリーな旅行環境の実現」の視点については、「快適な滞在環境」では最新技術の活用で「出入国審査の風景を一変」させるほか、通信・交通環境を改善。キャッシュレス観光も推進し、20年には主要な観光地などをすべてクレジットカード対応にする。「地方創生回廊の完備」では「ジャパン・レールパス」を日本到着後でも購入可能にするほか、新幹線開業などと連動してアクセスを拡充。日本人向けには「働き方と休み方の改革」を進め、20年までに年次有給休暇取得率を70%に引き上げるほか、休暇取得の分散化などで観光需要の平準化に取り組むとした。

 そのほかには安倍氏が3月10日の記者会見で示した通り、東北6県の年間外国人宿泊者数を20年までに現在の3倍の150万人に押し上げる。また、訪日教育旅行については、現行の目標「20年までに現在の4万人から5割増」の早期実現をはかる。外国人患者の受入体制が整備された医療機関については、20年までに現在の約5倍にあたる100軒を整備。訪日クルーズ旅客数は20年までに500万人に引き上げる。また、これらの施策に充てるため、宿泊税などの財源確保策も検討する。

 なお、海外旅行については、関係省庁と業界団体による若者の渡航活性化に向けた議論を開始し、16年中を目途に結論を得る。「若者割引」などのサービス開発を通じてテコ入れをはかる考え。