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「関西のUSJ」からアジアのリーダーへ-JATA経営フォーラムから

  • 2015年3月3日

徹底したマーケティングで勝利し
成功モデルを世界に輸出する

アトラクションではなく感動を売る

   業界の価値を高めるために値上げは必要だが、その価格が適正か否かは、消費者が判断する。値段が価値に見合わなければ来場者は減り、結果的に値上げは失敗となる。その反対に、値上げはするが来場者も増やす、というのがマーケティングの醍醐味でありやりがいだと思う。私は、マーケティングが消費者の購買行動を決定的に変える力を持つと信じている。

 マーケティングとは、単に「売る」のではなく、消費者を理解して「売れるようにする」ための必然性を作ることだ。そのための戦略はシンプルで、「誰に」対して、対価を支払う価値のある「何を」、「どのように」伝えて売っていくか。この3つの要素をしっかりと合致させることが重要になる。

 特に大切なのは「誰に」の部分で、勝負のほぼすべてはそこで決まっているといっていい。目的達成のためのターゲットである「誰に」は、十分に大きなものでなくてはいけない。しかし、すべての人を喜ばせようと思うと失敗するということも忘れてはいけない。

 私は「マーケティング力のある会社」とは、「消費者目線で統一された意思決定ができる会社」のことだと考えている。そもそも、マーケティング力を持つことは簡単ではない。テレビCMなどを見ると、7割から8割の会社にはマーケティング力がないように見えるし、USJのCMもかつてはアトラクションの説明ばかりで、消費者の目線を獲得していなかった。しかし言い換えれば、マーケティング力のない会社には成長の余地がある。

  そこで私がUSJに入社してからは、従来の「マーケティング・営業本部」を、消費者への接点となる他部門を統合した「マーケティング本部」へと改組し、マーケティング主導の体制を作り上げた。マーケティング本部の使命については、「消費者がお金を払う本質的な価値を絶対に見誤らない」こととしている。

 しばしば勘違いされることだが、板に穴を開けたい消費者が求めているのは、工具ではなく「穴」だ。我々はアトラクションを売るのではなく、来場者にとって価値のある「感動」を売る。その感動を来場者の期待以上に提供していくためには、会社が持つすべての資源を、その1点に集中させる必要がある。