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「関西のUSJ」からアジアのリーダーへ-JATA経営フォーラムから

  • 2015年3月3日

徹底したマーケティングで勝利し
成功モデルを世界に輸出する

映画よりも大事なものがある

   ただし、「ハリー・ポッター」よりも大事なのは、「ハリー・ポッター」のファンをどのようにしてUSJのファンに変えるかだ。そのためには施設だけでなく、現場のスタッフのクオリティも重要になる。USJではアメリカのテーマパーク風に、スタッフが来場者に積極的に話しかけるようにしている。「流石はお笑いの関西」と取られたりもするが、USJならではの魅力として楽しんでいただければいいと思う。また、「ハリー・ポッター」の魅力は小学生以下の子どもには伝わりにくい部分もあるので、3月には「ユニバーサル・ワンダーランド」をリニューアルして、再び家族連れにアピールする予定だ。

 次なる挑戦としては1月23日からの期間限定で、「日本発の世界最高を世界に発信する」ことをテーマに、若者に人気の高い「エヴァンゲリオン」「進撃の巨人」「バイオハザード」「モンスターハンター」をテーマにしたアトラクション「ユニバーサル・クールジャパン」を開始した。2月のこの時期は、寒さで家族連れの外出が少なくなる一方、試験の終わった学生など、若者の外出は多くなる。こちらはむしろ、家族連れにはまったくアピールする気のない企画といえるが、「ハリー・ポッター」との相乗効果もあってか、集客は昨年の2倍以上で、数年前の夏休みに近い状況にある。

 USJは今後も生存し続けるために、ハリウッド映画「だけ」のテーマパークであることをやめた。さまざまな意見もあったが、日本におけるすべてのレジャーに占める映画の割合の小ささや、関西圏の経済規模の小ささなどを考えれば、映画だけにこだわってはいられない。そこで、USJがこだわるべき対象を「映画」から「感動」に変え、「世界最高のエンターテイメントを集めたセレクトショップ」へと目標を変えたら、その瞬間にすべての娯楽がUSJの味方になった。今ではUSJは、世界のユニバーサル・スタジオのなかでも最高の集客率を誇っており、周囲も理解を示している。

 USJが入園料を上げ続けていることについては当然のことながら批判もあり、その度に私も心が痛むが、日本のエンターテイメント産業の長期的な振興のためには、やむを得ないことだと思う。そもそも日本のテーマパークの入園料は安すぎて、運営のコストや開発費を考えると割に合わない。もっとクリエイターやパフォーマーの生活を安定させ、活躍できる場を増やす必要があると考えている。

 常に海外からアトラクションを買い、高額なライセンス料を払い続ける構図からも脱却したい。今後は、超ハイテクなアトラクション以外については自分たちで開発し、いずれは日本発の超ハイテクなアトラクションを、米国などにも買ってもらう。将来的にはUSJ独自の成功モデルを、海外に輸出したいとさえ考えている。そのことが関西を、そして日本を活性化することにつながる。