サトー、銀座三越で販売支援実験、多言語で売場情報提供

  • 2015年2月18日

 バーコードや2次元コードなどを利用した自動認識システムの販売などをおこなうサトーホールディングスは、2月18日から22日まで、東京の銀座三越で訪日外国人を対象とした、買い物支援の実証実験をおこなう。近距離無線通信機能を内蔵したリストバンド約1000本を配布し、買物客が専用の端末で商品や売場の情報を入手できるようにするもので、店舗側の負担を大幅に軽減する。同社執行役員で最高マーケティング責任者の小玉昌央氏は、昨年にも同店での実証実験として、売場での多言語による商品情報提供をおこなったことを説明した上で、「今年はその枠組みを一歩前進させた」と語った。

商品の陳列場所を示す地図も出力できる 利用者は入店後に、同店9階の「春節特設コーナー」でリストバンドを受け取り、国籍や性別、買いたい商品などの情報を登録。その後は1階、8階、9階に備え付けられた専用端末にリストバンドをかざすと、おすすめの商品の情報が表示され、商品の陳列場所を示す地図を出力することもできる。発行された地図にはQRコードが印字されており、スマートフォンなどで読み取ると、商品情報が自動的に利用者の使用言語で表示される。言語は日本語、中国語、英語の3ヶ国語に対応。また、食品については、お土産として商品を渡された人がアレルゲンなどに関する情報を確認できるよう、QRコードを印字したステッカーを貼付するという。

 三越伊勢丹ホールディングス三越銀座店営業企画担当長の北條司氏は、同店の総売上高における訪日外国人旅行者の占める割り合いについて、「2013年度は約5%だったが、2014年度は倍以上になる」と説明。同氏によれば、同店の外国人売上高の約8割が中国人によるもので、今年の春節期間については前年の3倍から4倍の売り上げを見込むという。ただし、外国語対応については中国人の接客担当者を採用してはいるものの、「十分な対応ができていない」と説明。「すべてを人間で対応するのは難しい」と述べ、人間と情報端末の両方を活用したサービス体制の確立に期待を示した。

 同実験は、経済産業省が政府のIT戦略に則り、「訪日外国人へのおもてなし」をテーマとして昨年10月に募集を開始した「ID連携トラストフレームワーク・ビジネスモデルコンテスト」に、同社の企画案が採択されたことにより実現したもの。同省商務情報政策局情報政策課情報プロジェクト室長の和田恭氏は、10件の応募があった中から3社の企画案を採択したことを説明。同社の企画案については、利用者にとって負担が少ないこと、利用者の属性などに関するデータを取り込みやすいこと、緊急時の安否確認などにも活用できること、実現可能性が高いことを評価した旨を説明し、「審査員からも高い評価をいただいた」と伝えた。

 小玉氏によれば、今回の実験で「訪日外国人旅行者を“売り場”に誘導する」効果が確認できれば、次回は「アプリなどを利用して、訪日外国人旅行者を銀座三越の“店舗”に誘導する」仕組みに取り組みたいという。同社では将来的には、登録した訪日外国人旅行者の情報を一元管理し、宿泊施設におけるチェックインやチェックアウト、移動の際の点呼、観光客への情報提供、食材の禁忌に関する警告など、さまざまなポイントで活用する環境を構築したい考え。あわせて集積したデータを、旅行者の行動パターンや嗜好を把握するために活用したいという。