首都圏空港機能強化協議会、各自治体が国から住民へ説明要望

国土交通省航空局長の田村明比古氏
 国土交通省は1月21日、首都圏空港のさらなる機能強化に向けて具体的な議論をおこなう「首都圏空港機能強化の具体化に向けた協議会」の第2回会合を開催した。国交省は2015年8月の初回会合以降に実施してきた各自治体との協議の状況について報告。各自治体も、それぞれの取組状況について報告した。

 同協議会は、昨年7月に首都圏空港機能強化技術検討小委員会が中間取りまとめとして提示した具体案や選択肢をもとに、関係者が成田および羽田空港の2020年までに実現可能な機能強化策などを協議するもの。中間取りまとめでは、羽田については滑走路の運用や飛行経路の見直しなどにより約3.9万回、成田については管制機能の高度化などにより約4万回の年間発着枠拡大が可能と指摘している。

 議事進行を務める航空局長の田村明比古氏は冒頭の挨拶で、2020年の訪日外国人旅行者2000万人達成に向け、首都圏空港の容量拡大が不可避であるとの見方を改めて提示。自治体との協議の状況について説明した同省航空局は、これまで各自治体の担当者を対象に、15回の説明会をおこない、各自治体の質問やそれに対する回答を、同省ウェブサイトで紹介してきたことを報告した。

 同局ではそのほか、羽田着路線の南風時新経路に関わる自治体の担当者を対象に、騒音状況を確認するための現地見学会を計4回開催。周辺9市町からなる「成田空港圏自治体連絡協議会」とは、加盟市町と今後の協議の方針などについて確認するとともに、航空会社各社を招いてヒアリングを実施したという。

 会合では、関係1都4県とその市町村などの代表委員が、機能強化に関する国からの提案に対し、それぞれの見解を表明。一部の市町村などでは住民の理解も深まりつつあるとした上で、今後は国から住民への「丁寧な説明」がなされることを要望した。また、騒音や振動、落下物などによる環境への影響に対する対策や、成田空港の将来像の検討などについても、引き続き進めるよう希望した。

 この中で神奈川県副知事の黒川雅夫氏は、羽田空港の新経路案においては同県内のコンビナートやライフサイエンス特区の上空を通過することから、詳細なデータや対策案などを早急に提示するよう要望。千葉県副知事の諸橋省明氏は、現在の「千葉県が一手に騒音を受け止めている状況」を問題視し、海上ルートなどの検討を提案した。諸橋氏は成田空港については、「新たに強化される機能をどう活用するのか将来像を示してほしい」と述べ、成田市長で成田空港圏自治体連絡協議会会長の小泉一成氏も「成田のネットワークを維持するよう、しっかり対応していただきたい」と強調した。

 これらの意見を受けて国交省は、自治体レベルでは既に一定の理解を得られたとの見方を示し、今後は住民の理解の獲得に向け注力する考えを表明。国と住民によるウェブサイトなどでの双方向対話や、情報開示に努めるとともに、環境に配慮した機能強化策のさらなる検討を進める考えを示した。なお、次回会合の開催時期は未定だが、同省では2020年までの強化策実現をめざす観点から、2016年度予算要求を見据えたスケジュールで協議を進めるという。