国交省、首都圏空港機能強化で自治体と協議開始-16年度予算要求照準に
国土交通省は8月26日、首都圏空港のさらなる機能強化に向けて具体的な議論をおこなう「首都圏空港機能強化の具体化に向けた協議会」の初会合を開催した。7月に首都圏空港機能強化技術検討小委員会が中間取りまとめとして提示した具体案や選択肢をもとに、関係自治体や航空会社、有識者などと協議するもので、2016年度の予算要求をめざし財源確保や環境対策などについても議論する。
同小委員会が示した中間取りまとめでは、羽田空港と成田空港を中心とする首都圏空港で2020年までに実現可能な機能強化策や、以降に取り組むべき課題などについて提言。羽田空港については滑走路の運用や飛行経路の見直しなどにより約3.9万回、成田空港については管制機能の高度化などにより約4万回の年間発着枠拡大が可能との検証結果を示している。
この日の議事進行を務めた航空局長の田村明比古氏は冒頭の挨拶で、今後の首都圏の更なる国際競争力強化や訪日外国人旅行者の受け入れ、諸外国の成長力の取り込みの重要性について述べた上で、首都圏空港の機能強化の必要性を説明。「国の考え方についても説明し、できるだけ広くご理解いただける具体策を作り上げたい」と各方面に協力を求めた。
初会合では国交省が中間取りまとめの内容に則り、実現可能な方策として、羽田空港については具体的な飛行経路見直し案など、成田空港については管制機能の高度化に要する監視装置WAMの導入などについて説明。その後、各委員がそれぞれの立場から意見を述べた。首都圏空港機能の強化を推進することについては全ての委員が同意したが、自治体代表者はいずれも騒音や振動の影響、落下物などの危険性などについて懸念を示し、詳細なデータの提供や国からの充分な説明を求めた。
このうち、東京23区から成る特別区長会の会長を務める荒川区長の西川太一郎氏は、提示された飛行経路の見直し案などを受け、「一部の区以外は、具体的な影響のある航空機の上空通過を経験したことがない。各区からは不安を感じるとの声が挙がっている」と報告。一方、千葉市副市長の藤代謙二氏は、「首都圏空港がもたらす恩恵を首都圏全体が享受している今日では、騒音の影響についても首都圏全体で分担することが必要」と主張した。
航空会社からは、日本航空(JL)代表取締役社長の植木義晴氏と、全日空(NH)代表取締役社長の篠辺修氏が代表として出席。篠辺氏は首都圏空港の機能強化によるネットワーク拡大に意欲を示し、低騒音機材の導入など航空会社が取り組める課題については「最大限の努力をする」と語った。植木氏は、両空港の一体的な運用の手法などについて検討することを要望するとともに、航空会社として乗り継ぎの利便性向上などの面で、可能な限り協力する考えを示した。
今後は国と関係自治体などが、個別に具体的な方策に関する協議を開始する予定。国交省では次回の協議会の開催時期については未定としたものの、2020年までの強化策実現をめざす観点から、2016年度の予算要求に照準を合わせて協議を進めたい考えを示した。