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トップインタビュー:JATA会長 田川博己氏

海外・訪日の2000万人市場形成に注力
国内は地域との密着で強化

 日本旅行業協会(JATA)は今年6月の定時総会で、新会長にジェイティービー(JTB)代表取締役会長の田川博己氏を選出し、新たなスタートを切った。今後は海外・国内・訪日の3分野に「三位一体」で取り組み、「観光大国」の実現に向けて邁進するという。このほど本誌のインタビューに応じた田川氏に、年間出国者数2000万人など主要な目標の達成に向けた意気込みと、具体的な方策について話を聞いた。


-在任中に絶対に達成したい課題は何ですか

田川博己氏(以下敬称略) やはり年間出国者数2000万人の目標は達成したい。国内旅行と訪日旅行の需要喚起については、観光庁や日本政府観光局(JNTO)が中心として取り組むが、海外旅行についてはJATAが中心となる。現存する旅行会社が生き残るためにも2000万人市場の形成は絶対に必要だ。市場が拡大すれば旅行会社が成長するプロセスが現れる。

 ただし市場が拡大する前から旅行会社が利益のことばかり考えていては、市場はなかなか拡大しない。政策なども関係してくる話なので、旅行会社の視点だけでは頓挫してしまうだろう。市場拡大のためには、ニュートラルな視点を持たなくてはいけない。


-目標の達成に向けて、どのような取り組みを考えていますか

田川 出国率は各都道府県で大きな差があるので底上げをはかりたいが、そのためには幾つか環境づくりが必要になる。まず、航空座席の確保についてはしっかりと取り組みたい。日本全国に90以上も空港がある割にはチャーター便の本数が少ないので、国内だけでなく海外の航空会社にもアプローチする必要がある。JATAとしては、これまで海外の航空会社とは政策的な意見交換をしたことがなかった。そのほかにもCIQ体制の拡充やLCCのさらなる活用など、課題は幾つもある。

 若者の旅行離れについてはパスポート取得率を見る限り、ある程度の数字までは達しているので、実際にはそれほど深刻ではないと考えている。新たな取り組みとしては、学生の期間だけ使える安価なパスポートを発給する仕組みなどが検討されてもいいと思う。

 今の時代は、インターネットの発達などによって情報過多になった分、逆に海外旅行や留学に対する動機づけが難しくなった。中学生や高校生のうちに修学旅行などで海外を経験させる仕組みを、JATAの支部を通して各県の教育委員会などに提案していく必要がある。


-7月の就任後会見では、2000万人の達成は「可能」とのことでしたが

田川 日中、日韓間に横たわる政治的な問題を、どうやって払拭していけるかという部分はあるが、いずれにせよ全国に90以上の空港があるのだから、充分に可能性はあると思う。とにかく何とかして大台を超えなくてはいけない。1990年頃に米国のビザが免除になって、出国者数1000万人を超えた辺りでエイチ・アイ・エス(HIS)など新たな会社が台頭してきたことを考えると、やはり2000万人が次のメルクマールになる。

 日中、日韓間の問題は、2016年にリオデジャネイロで開かれるオリンピックとパラリンピックまでには何とか整理しておく必要があるだろう。閉会式では次の開催地がコールされ、全世界の目が東京に向けられる。2020年の東京開催までに整理すれば良い問題ではない。2016年までに日本のツーリズム産業の姿勢を示す必要があると思う。