トップインタビュー:JATA会長 田川博己氏
海外・訪日の2000万人市場形成に注力
国内は地域との密着で強化
-大企業と中小企業の双方に対するバランスが求められるところですが
田川 まずは海外旅行も訪日旅行も、2000万人の市場をつくり出すことを最優先に考えたい。新たな市場ができれば各企業の規模によってシェアは取れるはずで、1社に独占されることはないと思う。
そのためにも、2020年の東京オリンピックをツーリズム産業が積極的に引っ張っていくことが大事だ。日本オリンピック委員会には、リオデジャネイロオリンピックの閉会式で打ち出すイメージに、旅行会社の意見を取り入れていただくようお願いしたいと考えている。そこで単なる東京のイメージに終始するのか、オールジャパンのイメージが打ち出せるのかでは、大きな違いがある。
-今後の人材確保についてのお考えは
田川 人材の確保は全てにかかわる課題だ。しかし法務や労務、システム、広報など、企業経営に取り組む優秀な人材が少ないことが問題となっている。人材の養成は急務で、JATAがノウハウを蓄積して支援していく必要があるだろう。副会長をはじめとする役員の方々には、一流の経営者としての知恵を貸していただきたい。
観光を学ぶ学生の就職先として旅行会社の人気は低迷しているが、それは経営する側が哲学をしっかり伝えていないからだと思う。大企業の経営者はもっと前面に出るべきだと思う。また、観光デベロッパーのようなプロデュース業務などは人気が高いので、そのような職種からでも昇進できる人事プログラムを示すことができれば、人材は集まると思う。企業内の人材活用サイクルについては、JATAとしても何らかのモデルを示していきたい。
-旅行業法の改正、休暇制度についてのお考えは
田川 旅行業法には独自の歴史があるので、時代が変わってOTAが進化したからその歴史を断ち切ろう、というのは短絡的だと思う。過去と未来を見比べた上での選択が重要なので、根幹の部分を安易に変えることはしない。日本の業法が海外の旅行会社に適用されていない点については、我々は海外で現地の法律を遵守しているのだから、海外の旅行会社も日本の法律を遵守するよう、2国間閣僚会議などでしっかりと伝えていただきたい。
休暇制度については、新たな祝日を設定することなどよりも、有給消化率の向上について優先的に考えるべきだと思う。ヨーロッパのように2週間以上の休暇を年に2回取るようなシステムを、一部の企業から義務化していく時代が来てもいいと思う。政治的な問題もあるが、日本経済団体連合会(経団連)の観光委員会などが要望していく、というアプローチもあるかもしれない。
-ありがとうございました