現地レポート:MSCプレチオーサのベネツィア発着・東地中海クルーズ
イタリア客船のMSCクルーズで地中海旅行
カジュアル客船の受け皿の広さで新しいヨーロッパ商品としての取扱いを
MSCで最も人気の客船、MSCプレチオーサ
ワンランク上の「ヨットクラブ」の選択も
2013 年就航のMSCプレチオーサは、新造船の新しさが感じられ、船内は明るい雰囲気だ。カジュアル客船だが、船中央部のアトリウムは3層吹き抜けの空間を確保し、スワロフスキーを埋め込んだ階段を備える贅沢なつくり。イタリア客船らしいスマートカジュアルな雰囲気で、イタリアに親近感の強い日本人に好まれやすいだろう。
13万9000トンの船体は、世界最大22万トンが航行する現在では珍しくないサイズに聞こえるが、やはり大型船。乗船するとその規模を実感する。船内には6つのレストランと9つのバー・ラウンジをはじめ、各種施設がそろう。例えばプールも、メインプールと子供用プールのほか、ソラリウム、インフィニティプール、18歳以上限定の「TOP18ソラリウム」など多様で、それぞれ雰囲気や利用者の過ごし方が異なる。
このほか船内イベントも実施しており、7泊8日のクルーズで終日航海が1日という今回のコースでは、クルーズライフと寄港地観光を含めたトータルバケーションを楽しもうとすると、すべて体験できないほどのバリエーションを擁している。
船内で最も大切な食事だが、やはり食に定評のあるイタリアの客船。純粋な和食のメニューがなくても(ビュッフェでの日本食提供や寿司バーのある船もある)、最後の日程まで美味しく楽しめたのは、日本人の舌にあうイタリアン基調ということと、メニューのラインナップにあるのだろう。特に有料レストランには日本でも人気の「EATALY」があり、イタリアの味をこれでもかと愉しむことができる。
もうひとつ、MSCクルーズの特徴として外せないのが、MSCヨットクラブ。ホテルの上級フロアのような、利用客だけのワンランク上の専用エリアだ。近年、このトレンドは他のクルーズ客船にも広がっているが、その発祥はMSCクルーズ。2008年就航のMSCファンタジアから搭載し、13万トン以上の4客船で運航している。
船はカジュアルクラスだがMSCヨットクラブは6ツ星サービスを提供しており、カラーラ産の大理石など上質なインテリアが配されたキャビンは69室。24時間対応のバトラーもつく。生ピアノが演奏される専用のロビーラウンジ、ソムリエサービスのある専用レストランなど、賑やかな船内のなかでMSCヨットクラブには別の空気が流れている。
MSCクルーズ日本オフィスによると、同オフィスが送客する日本人客(日本発のパッケージツアー)はシニア層を中心に年間約1万人。年々拡大しているものの、主要市場である欧米に比べればその割合は小さい。しかし、MSCヨットクラブに限ると日本人の利用率はトップクラスに浮上する。
「日本人のために作った」という狙い通り、時に静かに上級に、時に陽気にカジュアルにと、自分のペースに合わせて雰囲気やサービスを選べるMSCヨットクラブは、日本人にあっている。ある意味で、ラグジュアリーシップでは楽しめないクルーズである。